紳士な婚約者の育てかた
店のそばに何時迄も立っていても仕方ないと車をとめてある
駐車場へ向かって歩き出す。いい腹ごなしにもなるだろう。
「……」
相変わらず知冬さんはちょっとご機嫌斜めで黙ったまま。
「私の家族はいいですから、自分の家族とは仲良くしてくださいね」
「悪くはないですよ。ただ、過干渉で憂鬱なだけです、父も母も」
「……」
「何ですか。俺の顔に何かついてますか」
さり気なく見つめているつもりだったが相手にはすぐバレて
志真を見つめ返してくる知冬。
「完璧お義母さん似だと思ってたけど、ちょっとお義父さんにも似てるなって」
肌の色は日本人の色白さんとはまた違う白さだし眼の色は青というかヴァイオレット。
後で検索したらこの眼の色はとてもめずらしいそうだ。
全体でみればフランス人の母親にそっくりで言われなければハーフに見えない。
でもよーくみるとお義父さんなパーツもある。目元と口元とか。
「……はあ」
本人は微妙な返事。
確かにあのインパクトの塊である父親に似てると言われても困るか。
二人が並んで歩いていてもどういう接点か身内でもないとわからないだろう。
かくいう私と歩いていてちゃんとカップルだと分かってくれる人は居るだろうか。
「私はよく母親と父親の半々だって」
「志真は志真だ」
「かわいい…?」
「かわいい?」
「き、聞き返された…っ」
そこは嘘でもハイとかなんとか言って欲しかった。
年甲斐もなく彼に何を言わせたかったのかと自分が恥ずかしくなる。
「そんなことより、母親が来るとなると面倒ですね」
「ホテルを用意するって言ってましたけど」
「俺の生活をチェックしに来るのは必至でしょうね。
あの人は俺が神からの授かりものと思い込んでいる」
「……私、居ないほうがいいです?」
「居なければ誰が俺の世話をするのかと怒り出しますから居たほうがいいでしょうね」
「あそっか。知冬さん絵を描く事以外しちゃだめなんだっけ」
息子の手は絵を描くためにあり、家事をするためではない。
堂々と言ってたもんな、超のつく片言の日本語で。
「…すぐ追い返しますよ」
「でも」
「俺が日本で志真と居られる時間は限られている。それを邪魔されたくない」
「知冬さん」
「志真からの誘いが何時来てもいいように」
「……聞かなかったことにします」
誘わないから。
結婚するまでは、だめなんだから。
そんな見つめたって貴方の布団に潜り込もうなんてしないから。