紳士な婚約者の育てかた


「どれも美味しかった…今日はいい夢みれそう」

あんな大きなエビ初めて。唐揚げも外はカリッと中はジューシー。
普段お目にかかれない高級食材をここぞとばかりに食べた。
もちろんデザートも堪能し食後には香り高いジャスミン茶も頂いて、
すっかり満腹ゴキゲンな志真。

何よりお会計の際にお財布を出す前に「先に出てて」と言われた。
こっちだって安定した稼ぎがあるのだからたかりたい訳じゃないけど、

でもちょっとやっぱり嬉しい。

お母さんに言ったら「甘えてるわね」と怒られそうだけど。


「ああ、すまんね。待っててくれたんか」
「ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」
「そんなん言うてくれるんは志真ちゃんだけや…」

少しして父親が店から出て、何故か驚いた顔をして近づいてくる。
もしかしてもう先に帰ってしまったと思われてたかもしれない。
実際、知冬は車へ戻ろうとしたのを志真が引き止めた。

「今度は私が」
「作ってくれるん?いやあ、手料理かぁ。嬉しいなあ」
「作る訳ありませんよ何を言ってますか?」
「知冬さん落ち着いて。私がお店をご案内してうちの家族も一緒に御飯でもと」
「ああ、ええねえ。もっとお互いに仲良くならんとね。家族になるわけやしね」
「はい」
「……俺は志真が居れば別に」
「テオ君。結婚ちゅうのはそういう自分だけのもんと違うんやで。
迎え入れる志真ちゃんの事もその家族のこともきちんと考えてやるもんやよ」
「……」
「…拗ねた」

ふつうのコトで何も間違ったことは言ってないと思うけれど、
36歳の大人が父親に諭されてムスっとして拗ねた。
慣れた光景なのか特に気する様子もなく父親は笑顔で去っていったけれど。





< 9 / 102 >

この作品をシェア

pagetop