紳士な婚約者の育てかた
地中海料理が思っていたよりも美味しくて2度ほどおかわりをしにいった。
その度に知冬さんがそばに居て、彼も食べるのかと思ったらそうでもなく。
デザートを取りに行ってもついてきて、でも彼はコーヒーを取っただけ。
まさかとは思ったけど、やっぱり私を見張っている!?
「あ、あの。お義母さんは何時まで日本に滞在されますか?」
「1週間ほどいるそうですよ」
「良かったら家に来て家族と食事でもどうでしょう、母が是非来て欲しいと」
「母も伺いたいと言ってます」
「よかった。じゃあ、都合の良い日をまた教えてください」
食事を済ませほろ酔いの母親と共にお店を出てエレベーター待ちの間に
さっきは緊張して言えなかった自宅ご招待の話をする。
知冬にお願いして母親に話してもらい、その返事を彼から日本語で聞く。
何時かは自分で聞き取れるようになりたい。
ちゃんとお義母さんとお話がしたいと強く思う。
「…志真サン」
「は、はいっ」
いきなり呼びかけられてビクっと体が震えるがなんとか返事をして笑顔を作る。
なんだろう、何か不手際でもあったろうか?怒っている顔じゃないと思うけど。
「テオ君。寂シガリ。大事に、して」
「寂しがり…」
「テオ君、大事なのは絵描くこと。それ、一番ネ」
「…はい」
「アナタは支えて」
「はい」
知冬さんにとって大事なことは1作品でも多く作品を世に出すこと。
その為にも私が彼を支えていけと、そういうことでいいのかな。
嫁になる事を認めてくれているのかな。
でも、どうじに不安にもなる。
画家さんを支えるってどうやったらいいんだろう。
「志真。先に1階のロビーにいて。母親を部屋まで送ってくる」
「いっしょに」
「鬱陶しい姿を君に見せたくない」
「…待ってる」
今もう既に酔っ払っているのか分かっててやっているのか
知冬にくっついて離れない母親。
冷め切った顔で志真にそう言うと彼は途中のフロアでおりた。
志真はそのまま1階へおりて、言われた通りにロビーのソファに座って待つ。
あれじゃすぐには戻ってこないだろうな。知冬さん。