紳士な婚約者の育てかた
おばさんもたまに変なセールスマンが来たとか言っていたっけ。
ここは人の多い道からはそれた細く寂しい道。
下手に焦って1人で突っ込まずに知冬を待って正解だった。
彼の後ろから緊張しながら家へ。
でももし、本当に危ない人だったらどうしよう
それで知冬さんが怪我なんかしたら
お義母さんには絶対嫌われるし自分でも許せない。
「いざとなったら買い物した荷物ぶちまけてやる…」
彼を守らなければ。
私だってやるときはやるんだ。
「ブエナース!元気してたー?」
気を引き締めて玄関先まできたら不審者がコッチに気づいて
駆け寄ってきてやけにオネエ口調で知冬に握手しだした。
後ろ姿で黒髪で分からなかったけれど、外国の人だ。
学校にいるALTのラテンのおっちゃんに雰囲気がそっくり。
「何だお前か」
「知り合い?」
「彼は」
「あれ。あれ。あれ。彼女が知冬君のフィアンセー?」
ニコニコとゴキゲンに笑ってぐいぐい志真の顔を覗き込んでくる。
酔っ払っているのかと思ったが別にお酒の匂いはしてこないから
このテンションがこの人の通常運行なのだろう。
「は、はじめまして。山田志真と申します」
「お初ですぅ。僕はフェルナンド・イグレシアス。フェルでいいよー」
「…は、…はい。あの。…えっと。フェルさんはこんな所で何を」
人の家の前をウロウロして覗き込んで、明らかに貴方は不審者ですよ?
今こうして話していても知冬さんの知り合いじゃなかったら
完璧に不審者ですからね?
志真の引きつった顔にはまったく気づく気配もなく、
とにかく立ち話も何だから中で話そうよとフェルナンドに言われて中へ。
なぜ貴方が決めます?
「前に何度か話をしたスペイン人ですよ」
「……あ。ああ。あの。…え。あれが?」
もっと違うのをイメージしてた。