紳士な婚約者の育てかた
初心者なのは誰だって最初はそうだ、皆同じ道を通る。
だから私だって成長しなきゃ。
知冬さんを理想の旦那さまに育てるためにも。
希望としては先日の紳士のような穏やかな優しい人で。
なんて口にしたらお説教1時間コースだから絶対言わない。
あくまで理想なのだから怒ることないのに。
うっかりポロっと話題を出してしまい滅茶苦茶怒られました。
私は学ばない馬鹿女です。
「今日はお鍋にしようっと。知冬さん野菜好きだもんね。魚も好きだし丁度いい」
土鍋とコンロは確か台所で見つけた。ホコリをかぶっていたけど。
ただ肝心のガスは無いと思われるのでスーパーで買い足そう。
荷物は多くなりそうだけど、ここは豪華にお鍋を作って彼を驚かせたい。
何より、母親に呼ばれたとかで彼はホテルに行ってしまっている。
よって両手に袋を抱えて帰宅。
『志真、ごめん。もうすぐ帰る』
「ど、どうしよう知冬さんっ不審者が居るっ」
『不審者?』
もう家につくとポケットから家の鍵を取ろうとしたらソレが見えた。
慌てて物陰に隠れ様子を見ながら鍵ではなく、携帯を手にする。
「家の前でウロウロして庭とか覗き込んでるっ」
『わかった。君は家から離れていて、駐車場で待っていて』
「……でも、家には通帳とか」
『ならなおさら離れて。金品狙いならそのほうがいい』
でもそれはおばさんが志真のために残してくれた大金。
そう安々と奪われるのは。
警察に電話しようとも思ったけれど。
あまりに初めてなことで判断がつかない。
「……」
『金はどうとでもなる。けど、君に何かあったら取り返しがつかない』
「……、はい」
『気をつけて』
知冬の言うとおり、下手に守りに行って何かされたら。
そっと足音を殺し狭い通路を抜けて知冬を待つために
彼が契約している駐車場でずっと待っていた。
今にも家に押し入られてないだろうか、あの通帳は無事だろうか。
知冬の仕事道具だって置いているのに。
「志真」
「知冬さん!」
しばらくして知冬の車がとまり、彼が出てきて。
「君はここに」
「一緒に行く。ぜったい二人の方がいい」
「……では、行きましょう。俺の後ろに居て」
「はい」
二人で家へ戻る。