紳士な婚約者の育てかた
そのはち

「知冬君、元気そうでよかった。というかアレじゃ元気にナルよね」

ニヤニヤしながら視線を台所で片付け中の志真に向けるフェルナンド。
酒が入ったのと元からのテンションの相乗効果で先程から彼女に聞こえるくらいの
大ボリュームで下ネタを乱舞中。ただし気遣ってかどうかは分からないが

それらは全てスペイン語なので志真には理解はできていない。

「パソコンの件よろしく」
「SISI!僕に任せてくれたらもうあっという間だヨ」
「彼女にネットの説明もしてほしいから手に入ったら持ってきて」
「でさ、予算どれくらいにする?彼女は中古でも良いって言ってたし
そんなスペックもこだわらないみたいだし?」

仕事のパソコンは別にあるし趣味で何をする訳でもなく。
ネットが出来たらそれでいい、くらいだった。
それすらも志真の場合自信がないという雰囲気で。

学校でのトラブルなら詳しい先生がいるからすぐ助かるけれど。

家で使うとなると。

「志真が使うものだから新品が良い、保証サービスもきちんとしたもの」
「Fooo!彼女思いだね。ケチケチな知冬君ぽくなーい」
「何かあった時に彼女がお前を頼るなんて絶対に嫌だから」
「……やっぱり知冬君だ」
「その為なら金に糸目はつけない」
「そんなに彼女が大事なわけだネ」

茶化すように言っていたフェルナンドだが少し真面目な表情で言う。

「婚約者は誰よりも大事じゃないのか?」
「君の数少ない友達も大事にして欲しいなぁ」
「アポもなしにいきなりやってきて何も知らない志真を怯えさせて
勝手に食事をしても通報しない俺は大事にしていると思っているけど?」
「僕には外交特権があるからネ。日本では僕を抑留できないヨ」
「悪役のような台詞だな。それが国を代表する人間の台詞か」
「ハハハ」

何が良かったか知らないが大笑いのフェルナンド。
そこへ志真がコーヒーか何か出しましょうかと顔を出す。
内容は全てスペイン語なので彼女には昔話で盛り上がる2人としか見えない。

「要らない、彼はもう帰りますから」
「えーお泊りしたい。志真チャン駄目かなー知冬君ともっと語り合いたいし」
「そ、そう、ですか?…じゃあ」

お泊りしてもらいます?と視線を向けると。

「帰りますから」

見たこと無いくらい怖い顔で念押しされたので志真はゴメンナサイと謝った。

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