紳士な婚約者の育てかた

「来て志真。側にいて。…志真」
「ふふ。知冬さん良かったんですか?あんなに盛り上がってたのに」
「あいつが煩いからそう見えているだけですよ」
「そう?」

昔からしっている友人を前にすると普段は冷静に冷めて見える知冬も
表情がかわるというか、笑ったりしていたし。
アレが彼の素なのかなとか思ってほのぼのと見ていたのだけど。

蹴りだされる前に帰れと脅したら不満そうな顔をしながらも帰ったフェルナンド。
やっと二人きりになった所で知冬に手を引かれて彼の膝に座って抱きしめられる。
最初は必要以上に近づくことが恥ずかしくて出来なかった志真だけど、
今はこうしてくっついていることに違和感はなくなっている。むしろ心地いい。

「これで離れても君と連絡が取れる」
「私きちんと練習します」
「うん」
「フェルさんがわからないことがあったら何時でも連絡してくれって」
「名刺でも渡された?」
「いえ。名刺は忘れたって言ってて、そのかわりにメルアドを交」
「志真ちょうどいい、携帯も替えましょうか」
「替えない」

異性のアドレスを入れる度に買い換える事になりそうで怖い。

「でもよかった。君が無事で。俺を待たずに飛び込んで行きそうだったから」
「ごめんなさい。パニックになっちゃって」
「何時も言っているように、君はか弱い女性なんですから」
「はい。あ。でも、知冬さんだって危ないことはさせられないです」
「セキュリティを考えないといけないな。父親に相談しよう」
「お義父さんに言ったら過剰なくらい色々と設置してくれそう」

そういえばお風呂の修理もこの前業者さんがきてくれて
新しい風呂に代えないと無理だと言われてしまって、
見せてもらったパンフレットの風呂はどれも高価だった。

そのどれもが半額以下に値引きしてくれるというし。

オマケも付けてくれると言ってくれたがコレ以上は申し訳ないから辞退した。

「志真の為だ。当然ですよ」
「知冬さん」
「母親がここを見たいと言っていたんですが、いいですか」
「え。ええ。そうだろうと思って掃除してましたしね」
「泊まりはしないので、少し我慢してください」
「知冬さんの普段の様子をチェックしないとですもんね」
「俺は何不自由なく満ち足りていると説明しても聞かない」
「ふふ」
「…だから、俺達がこうして仲良くしている所を存分に見てもらおう」
「あ、あんまりくっつきすぎるのはどうかと」
「嫌?」
「……、ううん。…嫌じゃ、ない」

< 36 / 102 >

この作品をシェア

pagetop