紳士な婚約者の育てかた

どうしよう。

一緒に過ごす時間が増える度に好きの気持ちが大きくなる。

このままで居られたらいいのに、でも、それは無理というもので。

私も知冬さんとフランスへ行ってしまおうか?

仕事は嫌いじゃないけど、事務員の補充はそんな難しいことじゃないし。


「最近忙しそうじゃないか。なんだ、ほんとに彼氏作ったのか」
「またそうやってセクハラ発言を平気でする」

お昼だというのにお弁当には手を付けずぼんやりと座っていたら
声をかけてきた西田先生。彼はもうすぐ奥さんが出産ということで
お昼にはいったん家に帰り様子を見て帰ってくるという日々だ。

「そんな悪く取るなよ。お前が幸せになるのは嬉しいからさ」
「ご祝儀はたんまりください」
「ははは。よしきた。赤ん坊が生まれたら写メ送ってやるよ」
「何でそうなる」

疲れているだろうにおくびにも出さず相変わらず大声で元気。

そのパワーが羨ましいような、そうでもないような。

「ま。頑張れよ」
「はいはい」

私も何れは旦那さんに甲斐甲斐しく様子を見てもらうように
なるのだろうか。画家さんだし会社には行かないだろうから、
つきっきりとかでそばに居てくれるかな?それなら安心かも。

彼に似た子どもならさぞかし美形。

出来たらあのヴァイオレットの瞳も受け継いで欲しいな。

子作りか。

「山田さん?」
「恥ずかしくて辛くて泣きそうでっ耐えられなくてっ」
「そんな顔真っ赤にして一体何を妄想しちゃったのかしら?」

苦笑している新野先生。

少しして、落ち着いた所でコーヒーをいれてくれた。

「……彼氏が出来たからって浮かれすぎてますよね」
「そうね。痛々しいほどに振り回されてるわね。でも幸せそうよ?」
「幸せです」

少しなれたと思ったら自分の知らなかった新しいことが次々と起こるから
心臓が持たないんじゃないかと思うくらい。

「そんな調子で遠距離して大丈夫?」
「まだ分かりません、どうなるのかな」
「すぐ追いかけたくなったりしてね」
「かも。です」
「初々しいことで」
「……もう30になるんですけどね」
「歳は関係ないわ」
「はい」

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