紳士な婚約者の育てかた
知冬と結婚したら何不自由ないセレブな日々が待っているのだろうか。
今のところそんな気配がしないというか。むしろ節約家になりそうで。
志真自身、家がお硬い職業なおかげか特に不自由なく暮らしている。
けど仕事をやめたらゼロになるわけで。
こんなことならもっとコツコツと貯金しておけばよかった。
おばさんのお金は使うつもりはない。今はまだ。
画廊に入るなり知冬はトモエと何やら楽しげに会話をして盛り上がっている。
その間志真はちょろちょろと画廊の中を探索。
この前あったものが別のものに変わっていたり内装も少し変えていて楽しい。
知冬の作品があった場所は別の作家の絵が。
「婚約者置いて盛り上がっちゃって。…私が他の人と喋ってたら怒るのに」
しみじみとしていたけれど、未だにおしゃべり中の彼にちょっとやきもき。
画家と画廊店主は共通の話題もあって楽しいのだろうか。
付き合いも長いみたいだし。
ヤケクソになって小さい置物でも買ってやろうかと思ったけれど、
値段が5万と聞いて笑顔で逃げてきた。
「志真。また不機嫌そうだ」
「……」
「志真?」
「……」
「志真」
「……」
「志真」
「……」
「志真」
「…知らない」
初めて連れて来てくれた時もこんなモヤモヤした気持ちになったっけ。
あの時はうまく自分の気持がわからなかったけれど。今は少し分かる。
あの場所に居ると門外漢な自分は置いて行かれている気がするんだ。
近くにいるはずの知冬がまったくの別人みたいになって、遠くに行ってしまって。
「これ」
「……何ですか?この箱」
手のひらサイズの小さい箱。プレゼント?何時買ったんだろう?
それともずっと持っていたとかかな?手荷物なんてなかったけれど。
開けてみてと言われて包装紙をゆっくりと丁寧に剥がした。
「欲しがってたから」
「さ、さっきの置物っ!?」
5万する奴だっ
「君はその手の民族装飾が好きみたいだから」
「……ファラオはただ勢いで」
あとコレも別に滅茶苦茶欲しかったわけでもなくて。
「ちがった?…難しいな、……わかった、もっと別の」
「違わない。ありがとう知冬さん」
「良かった」
「でもいいですか?コレ結構お値段が」
あ、金出せとか言わないでくださいね?
「志真が喜ぶなら気にしない」
「……そう、ですか」
「どうしてそんな顔をするんです?」
「いえ」
意外だ。