紳士な婚約者の育てかた
中古かと思ったらまさかの新品。嬉しいけれど受け取るだけで後は
ウヤムヤにする訳にはいかないし、初期設定から何から全部してもらって
全額は流石にいきなりは無理そうだからと今あるだけ、
それとなくお金を渡そうとしたけれど、フェルナンドには笑顔で断られた。
「志真?」
「やっぱり頂くっていうのは良くないですから、どうにかしてお礼をしないと」
「本人が要らないと言っているならそれでよくないですか」
「良くないですよ。パソコンはとっても高価なものだから、いくらフェルさんだって」
「志真。メールが来た」
「え?…え。え。っと。メールはこれをダブルクリック…」
初めてじゃないのにちょっと戸惑ったけれど無事にメールを読む。
それは先程帰ったフェルナンドからで、上手く機能しているか確認だった。
ひらがなが多いけれどちゃんと意味の通じる日本語でかいてくれていたから
志真も安心して返信した。
フェルさんはほんとなんでも出来て優しいなあ、でもこれくらい優しくないと
知冬さんのルームメイトは難しい気もする。
そして、そんな彼がキレるほどだった当初の知冬さん。恐るべし。
そのままだったら好きにまでならなかったかも。
「……もういい?」
「知冬さんが抱きしめるからもういい」
年甲斐もなく新しいパソコンに興奮してしまいあれこれいじっていたら
後ろからギュッと抱きしめられて。キツくではないが身動きが取れなくなる。
手をキーボードから離して、彼の手を握り返す。
「やっとふたりきり」
「はい」
「明日は俺が母親に適当に話をするので、志真は好きにしていてください」
「そんな訳には。と、言いたい所ですけど。何も出来ないですしね…」
フランス語はまったく話せないリスニングもほぼ不可能。
知冬を介してしか通じ合えないのだからどうしようもない。
お茶を淹れたりお昼を用意したりするくらいはできるけど。
結局そういうお世話係になっちゃうんだよな、私。
奥さんって思ってもらえるかな。
「志真。…いい?」
考え込んでいる志真の耳元で甘く囁かれて、静かに頷く。
体をパソコンから知冬に向き直し向い合ってキスを受け入れた。
「……知冬さん」
ぎゅっと抱きしめられて、いっぱいキスをして。
それで満足していたのが嘘みたいに最近は体が熱くなる。
彼もそうなんだろうか。
志真は唇が離れたのをタイミングにしてそれとなく様子を伺う。
「……」
凄いコッチを見つめてる。なに?なんの視線?
「……何ですか?」
ストレートに聞いてみた。
「君からの誘いを待って」
「待たないで」
「駄目ですか」
「駄目です」
「……」
「だ、だからそんな視線を向けちゃ駄目ですって!」
まだ、まだ駄目なんです。まだ我慢してください!