紳士な婚約者の育てかた

抱きしめられながらも優しく布団に寝かされて、まだ少し残っている温もりと
知冬の匂いに包まれて目を閉じたらそのまま眠ってしまいそうだけど、
今ここで寝たら絶対駄目なやつだ。

だって知冬さんが私を組み敷いたままどいてくれないもの。

「あ、あの。あのね?そういう不安じゃなくって」

そういうヤッテミヨウでもなくてね?

「いいから。志真、一度全部俺に任せてみて」
「……でも」

でもほら結婚前にそういうのは。

落ち着いてもらおうと必死に言葉をはっしようとする志真だが知冬の視線が恥ずかしくて。
つい視線をそらし、泳がせてしまい言葉も上ずって出てこない。

「君がそんなに不安になるのは夫になる俺に信頼がないからですよね」
「……」
「だから。俺がどれくらい志真を想っているか、しっかりとその体にも分かってもらいたい」
「知冬さん」

そんな真摯にまっすぐに言われると、断れないじゃないですか。

どうしよう、お母さんに怒られる。けど。

ここまで言われてしまったらもう受け止めるしか無い。

「あと、そろそろ俺も辛い」

のかなぁ?怪しい。

「そっちのほうが本音っぽく聞こえますけど」
「どっちも本音ですよ。だから」
「どうしてもって、…言うなら」
「君は嫌?心の底から嫌なら、しない」
「……ううん」

でも、志真としてもこれほど知冬に求められて断るのも。
こうなるから母親は家には入れるなと言っていたのかもしれない。
もう何もかもが遅いけれど。

もう覚悟を決めて、ここで私は脱処女だっ

「嬉しい。…じゃあ、志真。脱がします」
「い、いきなり!?あの。その。…いきなり!?」

まずはそのキスとか抱きしめるとか撫でるとかそういうのは。

「脱がない方がいいタイプ?」
「どんなタイプとか知らないですけど、まずはそのキスとか…」
「分かった」

お子様と思われても良いからいきなり全裸は嫌です。
まずはキスをして、抱きしめ合って、甘い言葉を聞いて。

それで。




「テオサーン!会いたかったヨー!」
「……」

玄関のチャイムが豪快に鳴らされて、お義母さんかと思ったら

はいって来たのはやたらグラマラスなお姉さまでした。

「……あ。知冬さんが無の顔になってる」

ということは身内?

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