紳士な婚約者の育てかた
このドサクサに紛れて知冬の布団をしまい込み。
庭へ続く戸も全部開け放し光と風をリビングへ入れる。
あと、食べかけだったパンも台所へ避難させた。
「母親はもう少し後から来るそうです」
「ママさん飲み過ぎたネ」
「そう、ですか」
「彼女はマリア。母親の身の回りの世話をする人です」
「ドモはじめましてーマリアデース」
ぎゅっと抱きしめられてキスの挨拶をされる。
ノリはフェルナンドに近いからスペインの人だろうか。
浅黒い肌にムチムチのグラマスボディは間近でみると迫力が違う。
「山田志真と申します。日本語お上手なんですね」
「旦那サン日本人ですからー結構出来ますよー」
「なるほど」
部屋に案内して何か飲み物でも出そうと台所へ向かう。
知冬ともどうやら日本語で会話するようだ。
豪快に笑う声がこちらまで響いてきた。
「テオさんのフィアンセどうしても見たくて先に来ちゃいました」
「ご主人は」
「家に置いて来たね。ママさん1人にさせられないし私日本語できるしね」
「お義母さんと仲がいいんですね」
「ママさん大好きね。いい人。テオサンはちょっとムズカシイけどね」
「……」
志真は苦笑い。
楽天的に考えていそうで案外人を見ているのかもしれない。
言われた当の知冬はまったくの無視でコーヒーを飲んでいるけれど。
「シマサン。あれ?シマサン、ママさんの旦那さん?」
「あ」
「嶋ではなくて志真です。まったく別の言葉なので間違えないでください」
「そんなきつく言わなくても。いいんですよ、響きが似てますよね」
忘れかけてたシマシマ問題。
こんな風に結婚したら色んな人に言われるんだろうな。
流石に延々に言われ続けるわけじゃないだろうけど。
やっぱりお義母さんの姓を名乗ろうかなあ。
「ムズカシイ」
「ですよね。…私も思います」
でもそれはそれで慣れてないから恥ずかしい。
「母親が来るまでマリアには適当にしてもらいましょう」
「適当って言っても」
「俺達は二階で続きを」
「し、しない!そんな二階でしない!」
「大丈夫。彼女は気にしないから」
「私がするの。私が気にするの。私が嫌なの」
何故1階に既にお客様がいて母親が来るまで二階でソンナコト出来ます?
「…嫌じゃないって」
「さっきはね?知冬さん落ち着いて。私はマリアさんとお話をしてるから。
貴方はお仕事をして。それでお義母さんが来たらちょっと来て話をする」
「……」
「ハイは?」
「……ハイ」
「よろしい。じゃあ、解散」