紳士な婚約者の育てかた

夕飯の材料を何時ものスーパーで買物をして無事帰宅。
外も楽しいけれど、やはり我が家は安心する。

といってもここはおばさんの家であり近いうちにまた
もとの実家ぐらしに戻ることになるのだが。

「部屋借りようかな…」

自立するだけの資金はあるわけだし、今更親元に戻るのも
なんだか憂鬱になってきた。
炊事洗濯何もかも殆ど母親任せでも大丈夫なのは楽だけど。

いや、もうそんな昔の自分には戻らない。

だって知冬さんの奥さんとしての1歩を踏み出しているわけだし。

「…志真?」
「知冬さん、このビンの蓋あかなくって。…開けられる?」
「やってみる」
「怪我しそうならやめてくださいね」

彼のために出来ることをしたい。

「………」
「む、無理そうですね」
「………」
「もういいから。そんな怖い顔しないで。今度にするから」
「……」
「これはなくても作れるし。手を離して。ビンから離して」
「……」
「知冬さん。もういいから。ね。…ムキになってしないで」
「……わかった」
「手大丈夫ですか?…怪我したら大変なんだから」

開けられなくてふくれっ面をしている知冬をリビングへ戻し
夕飯の下準備。少し早いけれど、
じっくりと煮込みたいので早めに作っておきたい。


「……」
「知冬さん。お仕事順調?」

一区切りついてからリビングへ戻ると知冬は庭に居て作業中。
邪魔しないように恐る恐る近づいて声をかけてみた。

「明日には終わりそうです」
「そっか」
「志真がしっかりと休ませてくれたからはかどりました」
「……も、もう。そういう言い方」
「いい匂い。夕飯が楽しみです」
「具材を奮発しましたからね。…あ。そうだ。その前にお酒とか飲んじゃいます?」
「君が注いでくれるなら」
「じゃあ準備するのでキリの良い所で来てください」
「分かりました」

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