紳士な婚約者の育てかた

「これでええかな」
「ありがとうございます。助かりました」
「ええよええよ。女の子の力やと難しいもんな!」
「あはは…」

義母のために買っていたワインを出してきて
2人で仲良く晩酌しようとしていたら突然の訪問者。
またフェルナンドかと思って気軽に玄関に出たら
珍しいことに知冬の父親が居て驚いた。

ついでに彼にお願いしたらあっという間にビンの蓋はあいた。
感動する志真だが、後ろで知冬が面白く無さそうにしていたのを
気づかないふりでスルーしておく。

「今日はな、2人にあいにきたんと風呂の様子みにきたんや。
先生も戻ってきたら使うやろうし、バリアフリーがええやろ?」
「そうですね。お義父さんが紹介してくださった業者サンもすごく丁寧で」
「当たり前や。キツく言うといたんで、なんでも言うたってください」
「そ、そんな。十分です。どうぞ座ってください、よかったら夕飯も一緒に」
「ええんかな?なあ。テオ君、ええかな」
「それを見越してこんな時間に来たくせに」
「あっはっは。バレてるわーさすがテオ君やわ」

相変わらず父と息子、2人並んでも親子だと信じてもらえないルックスの違い。
志真だってこの2人が親子だなんて今でもちょっと夢見てるみたい。
車できているであろう父親にお酒はすすめられないし、
そんな前で自分たちだけが飲むのもはばかられるのでやめておいて。

シーフードカレーとサラダを3人分用意する。

「お義母さんとは」
「今日デートしよう思ってたらテオ君とこ行くって言うてて。
夕方に会おうと思ったらマリアちゃんと遊びに出て行ってしもて」
「あらら」
「まあ、明日ゆっくり2人でデートしよう思って色々と手配した所ですわ」
「日本でデートは久しぶりなんじゃないですか?」
「そうなんやよ。ほんで色々と見て回る予定なんさ。映画とかも観ようと思ってて」
「映画」
「テオ君と映画デートする時は気をつけんとあかんよ?この子な、怖いのあかんから」
「別に観れる」
「変な所で意地はってもしょうがないやろ?今のうちに言うておいたほうがええ」
「あははは…は」

ごめんなさい、何も知らなくてもう一緒に映画みちゃいました。

それも、怖いやつを。

「……」

不機嫌な顔で父親を無視する知冬。

「今後気をつけますね。…あ。お義父さん、お水注ぎますね」
「ああ、どうもすんませんな!」
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