紳士な婚約者の育てかた
「志真?」
「……」
「……何ですか」
「……」
「志真。…キス、したいとか?」
仕上げは明日にしようと道具を片付けてリビングへ戻ると
じーっと見つめてくる志真。父親はいつの間にか帰ったらしい。
追加のお風呂のカタログと新たに防犯装置のカタログなどもおいて行った。
「浮気ダメ絶対」
「まさかその言葉を君が言うとは思わなかった」
「どういういみですか?私そんな優しくないんだから」
「そうですね。優しくない。全然優しくない。君は冷たい」
「…そ、そこまで徹底してないです。いえ、あの。徹底してますけど」
何だか変な言い方だけど、そういう意味じゃなくてそのあの。
知冬の返事に勝手にコッチがしどろもどろ。
彼は荷物を自分のテリトリーに片付けて志真の隣りに座る。
「俺だって優しくはないですよ?」
そう言ってさりげなく肩を抱いても志真は即座には逃げなくなった。
ただ今は別のことを考えているからかもしれないけれど。
「だ、大丈夫ですよ。私は。ぜんっぜん大丈夫だもん」
知冬さんを越えるようなイケメンは居ないし。
いや、顔では選んでないけど。性格だって可愛い所もあるし。
一緒にいて楽しいし。ドキドキするし。
「そうですか?俺にはそうはみえませんけど」
「ひ、ひどい!私が何時浮気したって言うんですか」
「じゃあ君が何時もお友達のように仲良くしている男は何ですか。
君が仕事の話と称して10分以上意味のない会話を続けてている男は?
君が俺に秘密で駅前で毎週会っている外人はなに?」
そんなしっかりとマークしてたのね。
というか、最後の駅前留学バレてるしっ。
「お仕事上の同僚だったり、上司だったり、先生だったりですっ」
「ふーん」
「知冬さんこそ毎日女の子に囲まれてて」
「あんなガキに囲まれても煩いだけだと思います」
「一応講師なんだからガキって言わないの。だめなの!」
「…Oui」
拗ねた顔で頷くけれど。あまり納得はしてなさそう。
なんとなーくそんな気はしてたけど、
知冬さんは怒りっぽい。わがまま。
そして、とっても嫉妬深い。
「遠距離が怖いなぁ。お義父さんに何度も念をおされちゃったけど…」
アシストしてくれるって嬉しいことなのに、あのお義父さんなら
志真の気持ちを察してくれるだろうし。
そんな中でも結論が出せない私のばか。
「志真。風呂に行こう」
「はい。じゃあ。準備しますね」
「あ。せっかくだから今日行ったホテルで済ませればよかった」
「はは。たしかに元を取れたかも」
「じゃあ、次はそうします」
「はい。……え!?」
また行くきですか!?
「志真?」
「……次はもう少し、可愛い感じで」
「そうしましょう」