紳士な婚約者の育てかた
「短い期間だったのに皆に引き止められるなんて。人気があるって凄いな」
「……」
「私が辞めたって気づく人なんて先生くらいだろうし」
「……」
「比べるのも変な話ですけどね」
車内にて、ぼんやりとそんな事をぼやいてみる。
「志真。このまま帰る?それとも、病院へ行く?」
「帰ります。今は面会謝絶だし、何かあったら母が連絡をくれるので。
病院にいると悪い方にばっかり考えてしまうし」
「…そう、わかった」
「……」
朝と昼と母と連絡を取り合いおばさんの様子を確認している。
けど、相変わらず面会は出来ないし容体はよくも悪くもならないし。
待合室に居てもおばさんの居ない病室に居ても落ち着かないだけだ。
母も病院へは行かず、家に帰ると言っていた。
ただ、何時でも駆け付けられるようにはしているらしい。
もちろん志真も何時でも行けるようにはしているけれど、
ただ、そんな時はもう半分は諦めないといけない時のように思う。
「夕飯どうする」
「どうしましょう。…何が食べたい?」
「疲れた顔をしている。今日は…」
「だ、大丈夫ですよ?全然作れますから」
「ナンドを呼んで何か作ってもらいましょうか」
「あ。それいい」
フェルナンドはすっかり居心地がよくなったようで何も言わなくても
ちょくちょく上がり込んでくる。手土産にビールだったり料理を作ってくれたりして。
家に到着する前に路肩に車をとめて知冬が電話。
志真がすると言ったらアイツが調子に乗るから駄目だと言われた。
「知冬君から聞いたよ。オバサン、調子良くないんだって?」
「はい」
連絡して30分もしたら両手に荷物を持って家にやってきたフェルナンド。
フットワークの軽さと面倒見の良さは女性に受けそうだと思う。
本人曰く、それが余計に軽く見えてしまって受けが悪いそうだけど。
「僕の大好きだったオバァチャンも去年亡くなってねぇ」
「そうなんですか。…辛いですよね」
「別れは辛いものだけど。きっと天国で楽しくやってるよ。オジイチャンと」
「そうですね。きっとそう」
「お腹いっぱい食べて飲んで元気だそうネ。見守るのも体力が必要なんだよ」
「はい」
そして終始明るく元気。それも無神経な明るさでなくてちゃんと気遣って。
「……」
「知冬さんは座ってて。すぐ出来ますからね。すぐすぐ」
「志真はこっちでいっしょに」
「私も何か手伝わないと。…動いていたいし」
「……わかった」
「知冬君の好きなのいっぱい作るからね、まっててねー」
「ふふ。なんだかお義母さんみたいですね」
「……」
「あ。すいません」
でも本当にそれっぽい。