紳士な婚約者の育てかた

「鍵もしめたし、庭も片付けている。よし、…これで邪魔はない」

夕食を食べている間にお風呂も湯をはってあるし、
タオルや下着などの準備も万全。
あとは自然に知冬を誘ってお風呂に入れば良い。

「……」

知冬は夕食後ノートパソコンに向かって何やら作業中。
もしかしたらお仕事かもしれないので様子を見て。

「……」
「……」
「……、…志真。何か?」

じーーーーっと側で見つめていたら流石に無視で気ない様子で横を見る。

「お風呂の準備出来たからどうかなーって。でも忙しいみたいだから」
「少しだけ待ってくれますか。秘書が帰る算段をつけてくれたようなのでその確認を」
「……」
「しようと思ったけど。君がそんな顔をするから、風呂へ行きます」
「い、いいですよ。気にしないで」
「そんな嫌そうな顔をしておいて。…君は嘘が下手だ」

知冬は苦笑し、パソコンを仕舞うと立ち上がり志真を抱き寄せる。

「知冬さん」
「俺も凄く慌ててた。早く君が欲しくて必死になってた。君が一緒に来てくれないと知って、
覚悟を決めたら今度は君が慌てている。……変な話だ」
「好きで知冬さんと離れるわけじゃないんですから。…辛いのは、辛いですから」
「そう。…行こうか志真」
「はい」

軽く志真のおでこにキスをして知冬は風呂へ向かう。志真も一緒に。ドキドキしながら、
でも前ほど恐怖はない。距離が出来る時間が目前に迫っていて
もう不安とか怖いどころじゃない焦りがあるのかもしれない。

お互いに焦ってる。距離が出来てしまうこと、何も触れ合えてないこと。

それで気持ちまで離れてしまうんじゃないかとか。

そんなはずないって思っているはずなのに、お互いに。


「志真?」
「……何だか自分に自信がなくなる」
「え?」

脱衣所に入り服を脱ぎ始めて、ちょっと切ない気分。
特に何のデコボコもないいたって平均的な体だと思う志真。
対して外国人の血なのかすらっとなさっているお隣の人。
豪快に脱ぎ捨てるように服を脱いでいるけど。

「…こ、こんなでいいんだろうか」

むしろ夢や期待を持ったままで離れたほうが現実を知らずにすむ?

「志真。恥ずかしい?俺先に入ろうか」
「は、はい」
「じゃあその代わり座って見てるから。君が入ってくるの」
「一緒に入りましょうね」
「君の体をくまなく少し距離をおいてから見たい」
「苛めですか」
「想像した以上に、綺麗だったから。…志真の体」
「……」
「早く中へ入ろう、俺はもう脱いだから。少し寒い」
「は、はい」

< 84 / 102 >

この作品をシェア

pagetop