紳士な婚約者の育てかた
えぴろーぐ

憧れの花の都、オシャレな街、パリジェンヌ。

いや、ここパリじゃないけど。でもフランスはフランスですから。

「……うぅう……こ、…これが…時差ボケ…というやつ…なの?」

飛行機から降りた感動の1歩が異常にふらふらする。頭がクラクラする。
そして思いの外、暑い。日差しがキツい。
やっとここまでたどり着いたのに、愛する人と感動の再会になるはずだったのに。
彼の顔を見た途端に吐き出しそうなきがして怖いんですけど。

帰れって言われそう。大丈夫かな、ちょっとトイレで踏ん張ってこようかな。

その前にキャリーケースを取りにいかないと。ああ、クラクラする。

「志真サン?大丈夫?志真サン」
「……あ?…あれ。マリアさん?…マリアさん!」
「アララ。調子ワルソウネ!大丈夫?」

手を掴んでくれたのは明るく元気で恰幅の良いおばさん。
お義母さんのお手伝いさんがどうしてここに?知冬さんの姿はない。

「ちょっと休んだらなんとなかるかと。でも、マリアさんが迎えに来てくれたんですか?」
「テオさんちょっと忙しいカラね。私代わり。ごめんね、モウちょっとまってね」
「いえ。いいんです。むしろその方が」

好都合だ。感動の再会はもう少し元気な顔でしたい。
彼女の案内で荷物を無事に引き取り、彼女の運転する車で移動。
家までどれくらいなんですか?と聞いたらさらっと4時間くらいかな?とか言われて
気を失いそうになったけれど、明るいマリアと喋って気づいたら寝ていた。

いや、もしかしたら日本だったら絶対捕まってるくらい道路を爆走する彼女の運転に

気を失っただけかもしれない。



「志真サン。志真サン、ついたよ」
「……生きてる…」
「知冬さんまだ戻って来てないケド。ここで待っててネ」
「……居ないんだ」

肩を豪快に揺らされて目を覚ますと自然に囲まれた中にポツンと駐車場。
他に車が2台ほどとまっていた。マリアが荷物を持ってくれて、2人で移動。
家までは少しこの自然豊かな道を歩くらしい。
途中から左右には何かの作物が育てられているが何なのかは分からない。

そんなことよりも早く横になって寝て、なんなら吐き出したいくらい。

初海外でここまでコテンパンにされるとは思っても見なかった。

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