紳士な婚約者の育てかた

「マリアさん。ここって何ですか?ホテル?」
「ウウン。ここテオサンのアトリエダヨ?」
「アトリエ?あ。そうなんだ。ここが」

そういえば彼のアトリエは昔の貴族の別荘がどうとかって言ってたっけ。
田園風景の中にぽつんと建っている綺麗な建物。お庭も綺麗に整えられて
今にもドレスを着たお姫様とか王子様が出てきて御茶会でも開きそう。
あんまりにも雰囲気が良すぎるから家と思えなかった。家というかアトリエか。

「やっと志真サンが来るって大急ぎで準備シタよ」
「知冬さんは何時くらいに来るんですか?」
「もう来ると思ウヨ。今ね、教会の壁画トカ修復シテルからチョット忙しい」
「…そうなんだ」
「でも志真サンが来るって聞いて。大急ぎで仕事シテルね」
「知冬さん」

遠くから見ても大きく見えたけれど、近づいたらやっぱり見上げる大きさ。
流石にひとりでここを管理しているはずはないから庭や1階には人が居て
皆何を言っているか不明だけど頭を下げて歓迎?はしてくれている模様。

「テオサンからここ案内してって言われてる」
「ここは」
「テオサンの部屋ね。貴方の部屋、テオサンの部屋。ラブラブぅ」
「マリアさん。……じゃ、じゃあ、ちょっと休憩させてもらっても」
「ドゾドゾ」

ひときわ重厚な扉の向こうは机とベッド、クローゼットがあるだけの質素な部屋。
ただ置いてあるものは高級なアンティークなようで下手に触って壊したら弁償が
怖そうなのでさわらずに、キャリーケースを適当な場所に置いてベッドに寝転ぶ。
何でこんなに大きいのか分からないけど、キングサイズくらい?かな。

まさか私と一緒に寝るのにこれに買い換えたとかじゃないよね?

別にいいんですけど、ですけども。

ああふわふわで気持ちいい。窓からの風も心地いい。


なんて、

「……あのぉ。……ここ、…何処でしたっけ」
「俺のアトリエですけど?」
「今、何時?」
「そうですね。今、朝の9時ですね」
「私あのままずーーーっと寝てた?」
「寝てましたね」
「何で起こしてくれなかったんですか?って言っても良い?」

目を閉じたらもう一夜明けて朝になってました。

そりゃアトリエについたのは夕方だったけどまだ明るかったのに!

彼との感動の再会が!

こんな寝ぼけた頭ボサボサのとんでもない寝顔でなんて嫌すぎる!!


< 93 / 102 >

この作品をシェア

pagetop