紳士な婚約者の育てかた
外国で言葉もそこまで達者でない自分が働くのは至難の業。
だから日本語学校で働けるとしても語学は出来ないと駄目だから、
未だにテキストを持ち歩いて勉強はかかさないし、
知冬にも手伝ってもらって理解を深めるつもりでいた。のだけど。
婚約者が再会してそうそう、不機嫌で喋ってくれません。
「知冬さん。待たせてゴメンナサイ、謝るから。ね?機嫌直して」
「……」
「ねえ。お願い」
「……」
こっちを見てもくれません。
「知冬さん。…これからは一緒でしょ?ね。ね。それとも、…帰れっていうの?」
仕事も無いんですよ?親には哀れみで見られるんですよ?
新野先生もきっと可哀想にとかって半分笑いながら言うんですよ?
お酒とか山程飲まされてやけ酒しまくって喉が痛くなるんですよ?
ねえねえ、と彼の腕を軽くつついてみる。
「……、…志真を独占する予定だったのに。これじゃ意味がない」
「え?でも家に帰ったら一緒じゃないですか」
「……」
「前は期間限定の同居だったけど。今回はそうじゃないんだし。ね?」
「……、…そうですね。もう二度と日本の土は踏まさない」
「あ。そ。それは怖い」
せめて年に1回位は里帰りがしたいです、とか今言える空気じゃない。
どうやらよほどここに来る事を望んでいてくれたようで。
やっときたのに仕事を先に決めていて家に居なくなるから不機嫌、と。
でもなにもしないでただただぼんやり過ごすのも正直辛いというか。
「志真。ここに来てくれたからには、俺と結婚してくれる意志があると思っていい?」
「はい」
「そう。じゃあ、ビザの関係もあるしさっさと結婚しておこう。あ。挙式したほうがいい?」
「そ、そんな片手間に!?」
「指輪も買いにいかないといけないのか。それは今日行けばいいとして。後は」
「待って!待って!知冬さん待って!」
何か凄い怖いプランを立て始めたぞこの人。
「志真の白無垢も捨てがたいけど、まあいいか」
「良くない全ッ然よくない。何一ついいことない!」
「何がですか?ああ、…白無垢?」
「違う!まず結婚!」
「しないんですか」
「するけど。するけど!一生に一度のことだからそんな雑に終わらせるの嫌です。
ここで挙式するのは構いませんけど親も当然呼びたいし、友達も呼びたいです」
「わかりました。…じゃあ、そうしましょう」
こんなので大丈夫なんだろうか、私の未来。
でもここまで来ちゃったからにはやるしかない、それに後悔もしてない。
「知冬さん。お腹すいた」
今のところは。