紳士な婚約者の育てかた
「……何でって。…寝てたから」
「起こして欲しかったです!感動の再会が!」
「別に俺は感動はしてないですから大丈夫ですよ」
「……えぇ」
感動してないの?嬉しくないの?せっかくフランスへ来たのに?
ベッドの隅に座っている知冬さんは日本に居た頃より髪が伸びていて、
後ろに束ねていた。それくらい仕事が忙しかったのだろうか。
いや、そんなことはいいの。
「何時までたっても来ないからむしろ怒っているくらいです」
「ええ」
まさかのお怒り?電話したときは凄い喜んでくれたのに!?
あれはおびき寄せる為の演技で実際は凄い怒ってたの!?
どうしよう、今からお説教でも始まるのだろうか。怖い。
逃げようにもまだ体が本調子に戻っていなくてベッドから抜け出せない。
「何度君に忘れられたんじゃないかと不安になったか。迎えに行こうと思っても
君がその気でないのなら意味が無いと思ってやめて。ただ我慢していたんですよ」
「……はい。すいません」
おばさんも元気でリフォームした部屋を大喜びで使ってお風呂も入ってます。
病気だったなんて嘘みたいに、今日も張り切って生きてるでしょう。
「1年と3ヶ月。よくもこんなに待たせてくれたものですね?」
「そんなに?ごめんなさい。でもでも。聞いて?ただぼんやりしてた訳じゃないんですからね!」
「……」
志真はかけてもらっていた布団から出て知冬の隣に座る。
彼はまだちょっと不満そうな顔で視線を合わせてはくれない。
「フランスで働けるように日本語教師の勉強をしてたんです!講習も受けたんです。
お義父さんのツテで面接もしてもらって、無事に突破しました!」
「……」
「まさかの教師です。公務員的なものじゃないけど、これなら私にも出来るかなって」
「……志真」
「だからちょっと遅くなったけど。でも、これでずっと一緒に」
「……」
「あれ。知冬さん?不機嫌?何で?まだ怒ってる?でもでももう一緒だから」
仕事も辞めてきました。泣いてくれたのは両親と新野先生だけでした。
他は頑張れとだけ。
「俺は君を待っていた。待っていたのに、……仕事?仕事?」
「そうですよ。仕事。お義父さんにも手伝ってもらって頑張って見つけてきたんですから」
「……」
「そんな怖い顔しないで」
「まさか明日から行くなんて言わないですよね?」
「明日?明日。じゃなくって、明後日ですね。校長先生とお話を」
「……」
「わあ凄い怖い顔」