紳士な婚約者の育てかた

フランスでの新しい人生は慌ただしいけれど、今のところは順調。

無事に婚約者と再会出来たし、彼のアトリエで何不自由なく暮らせているし。
新しい職場の見学をして、何時から働けるかの確認もした。
事前に必要なものは日本で確認してあるし、申請もしてあるから大丈夫。
というか、難しいことは全部お義父さんがしてくれた。
わからないことがあればお義父さんに聞けばあっという間に解決する。

後は両親への電話。これは時差があるからきちんと確認しないと大変。
両親も心配してくれていて、無事に辿りつけたことに安堵していた。

あとその合間まいまに結婚の準備。

何でこんないきなり?こんな適当に?ものすごく不満なんですけど、

志真が口を挟まないとどんどん勝手に決まるから仕方ない。


「結婚するのはするけどさ。何もこんな慌ててしなくっても。プロポーズもしてほしいし。
場所とかもやっぱりこだわりたいっていうか…ドレスも可愛いのがいいっていうか…」

ひとりお風呂にゆっくり浸かりながらぼんやり考える。
知冬は仕事に出ていて帰ってくるのはもう少し後。自分は外に出るのに
志真が仕事で出ていこうとすると不満な顔をするのは不公平じゃないだろうか。

本人曰く、この仕事が終わったら暫くオファーは断るらしいけど。

「どういうのがいい?可愛いっていうと、例えば?」
「えぇ?うーん。やっぱりマーメイドなシルエットで大人っぽい……ええ!?」

振り返ったら何故か立っている知冬さん。

「俺がデザインする。君のドレス。だから、教えて」
「……ノックして」
「志真が大きな声で喋ってるから。誰かと一緒に風呂に入っているのかと思って。
慌てて来たんですよ。すいませんでした」
「絶対嘘」

慌てて湯船に深く身を隠すけれど、たぶん見えてる。
知冬はすぐそばまできてその場に座り志真の頭を撫でた。

「…ただいま志真」
「お帰りなさい」

風呂場じゃなかったらいいセリフなんだけどなぁ。

「仕事を終えて、ここに戻って。君が居るのが嬉しい。待ったかいがあった」
「知冬さん」
「今日から君を抱いていい?」
「……から?」
「Oui。は?」
「……う、うぃ」

ニコニコとご機嫌になってくれるのは嬉しいのだけど。
何か不穏な言葉を聞いた気がするし、そろそろ出て行って頂きたい。
やんわりと退席を促したら分かっているくせに気づいてないフリをされて
結局のぼせる前に出た。


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