気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「残念でした、嘘だよ」

「なっ……」

笑みを浮かべている景さんは、わたしから離れてからかいじみた表情でこちらを見てくる。

そんな景さんに対して、わたしは訳が分からなくなってしまいそうなほどの羞恥に追い込まれていく。

間違いなく冗談だって、わかっていたけど。わかっていたのに――その唇に、期待をしてしまった。
そんなこと絶対知られたくないのに、彼は意地悪なことを言う。

「期待した?」

「し、していません!」

わたしは動揺しながらすかさず否定をしたけれど、顔を赤くしていてこれじゃ説得力がまったくないと思う。

恥ずかしい。からかわれたことも、自分が一瞬、景さんにキスをされてもいいって無抵抗だったことも。

景さんはわたしから視線を外し、伏し目がちに小さく笑った。
迫られても無抵抗な、軽い女って思われてしまっただろうか。

そんな不安が湧き上がってきて、わたしはうつむいた。

「春ちゃん、かわいい反応するんだなあ」

「……からかわないでください」

「かわいいから、からかいたくなるんだよ」

茶化すような言い方をいつものように怒りたいのに、今はどうしてもそんな勢いを出すことはできなかった。
乱れてしまった髪を縛り直して、平然としようと思うしかない。

もうっ、景さん。どうしてこういう、わたしの気持ちが混乱しちゃうようなことをするのよ!

好きな気持ちと仕事仲間としてそばにいたいという気持ちが、このままじゃバランスを崩してしまう。

お願いだから、これ以上わたしをからかわないで――。
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