気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
大体、わたしは峯川さんと初対面なのだから、こういう状態になることは予想ができた。

それでもここへ来たのはわたしだから、つまらなそうな顔や態度はしちゃいけない。それくらいは心得ている。

「あれっ、ライターどこだっけ……」

メニューをぼうっと眺めていた視界の隅で、峯川さんが一本の煙草を持ちながら鞄を漁っている。

わずかに視線を上げたらテーブルに置いてあるライターを見つけたので声をかけようとしたとき、そのライターを景さんが手に取った。

「ここにありますよ。さっき煙草と一緒に出してたのに。礼香さんって、たまに抜けていますよね」

からかうような声色だけど、そこには親しいからこその近い距離がある。
景さんはライターの火をつけて、そっと峯川さんに差し出した。

「……どうもありがとう」

伏し目がちに苦笑して火に煙草を近づけた峯川さんの姿に、ドキンと胸が鳴った。
火を差し出す景さんと峯川さんの、その一瞬がものすごく綺麗で……わたしの心に痛く突き刺さるようなものがあった。

景さん、煙草苦手って言っていたのに。峯川さんには嫌な顔をせずに、火まで差し出してあげている。

なんだか嫌な気持ちになる。それはふたりが親しくしていて、景さんが……峯川さんを特別扱いしているような気がするから。
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