気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
4.涙とキスは甘苦い?
***


雲に覆われて日差しが届かない今日の気温は、四月下旬の平均気温よりも低かった。

いつもより厚手のカーディガンを着て家を出て正解だったなと、外で昼食を終えたわたしはエレベーターに乗りながら思う。
そして十一階で降り、通路を歩き出した瞬間、中央の辺りで壁に凭れている景さんを見つけてドキリとした。

――峯川さんと飲み会をした日から、わたしは景さんを避けている。

気持ちが不安定になりそうだから。
任されている大事な仕事もあって、それに集中したいし余計なことは考えたくない。

景さんと峯川さんのことを気にしないようになるべく関わるのをやめようと思った。

彼に声をかけるのを他の同僚に頼んだり、話しかけられても仕事の内容じゃなかったら『忙しいので』と最後まで聞かなかったり。

あからさまだと自分でも感じるけれど、これが最善策だと思った。

わたしを見ている景さんが、壁から背中を離してこちらに向かってくる。
真顔の彼に、わたしの鼓動は速くなっていった。

「春ちゃんさ、俺のこと避けてるよね?」

「っ……」

目の前に立ってそう訊ねてきた景さんに、気まずくて体が強張る。
そうです、と答えられるわけがない。

黙ったままでいると景さんがわたしとの距離をさらに縮めた。
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