密星-mitsuboshi-
「ちょっと休憩でもしない?」

美加の提案に、ひとつ上の階にあるカフェへと向かった

店の前まで来ると、コーヒーのいい香りが鼻を通る
誘われるように店内に入り
ソファ席に座ってコーヒーをすすると
2人は、はぁ~っと一息ついた
歩き回って疲れた身体に温かいコーヒーが染み渡る

「あー楽しかった♪
 ちゃんとしたショッピングなんて
 久しぶり」

早紀が嬉しそうに横に置いたショップ袋を見ながら笑みを浮かべた

「どぉ?少しは気が紛れた?」

「え?」

「今日、渡瀬さんの家で
 例の飲み会やってるんでしょ?
 間野ちゃんとしては心中穏やか
 ではないと思ってね」

「美加さん…それじゃ」

「こうゆう時って1人でいると
 気が滅入るんだよねー」

早紀の気持ちを察して誘い出してくれた美加の気遣いが
今の早紀には本当に嬉しかった

「実は朝から気持ちが落ち着かなくて
 1人でいると余計なこと考えちゃうし
 どこか行こうと思ってたところに
 美加さんから誘いが来たの
 気にしてくれてありがとう」

「いーのいーの。
 私は応援するって言ったでしょ?
 女友達に出来る事ってのはこんな
 もんだけどね」

美加はニカっと笑った

「さーて、
 そこそこいい時間だけど
 ご飯でも食べにいく?
 それとも…」

美加が腕時計を見たとき、美加のスマホが鳴った

「…あれ、堤さんだ。出るね。

 もしもし~お疲れ様です!
 どうしました?」

美加が話している間、早紀は自分のスマホの画面を見ていた
開かれているのは渡瀬のアドレス
電話したい、メールでもいい
渡瀬に繋がりたいが
里緒が近くにいるかもしれないと、思いとどまる
朝からそれの繰り返しで、そのたびに溜息をついていた

「間野ちゃん!」

美加の声で開いていたスマホの画面を閉じた

「ど、どうしたの?」

「あのね、
 堤さんが今この近くで飲んでるん
 だって!
 良かったら合流しない?って
 せっかくだから行ってみない?」

「わぁ、すごいタイミング
 お邪魔じゃなければぜひ行きたい♪」

「よーしじゃ行こう
 駅前のイタリアンだって」

2人はシステム部の先輩、堤 千秋が待つ店へと向かった


堤から指定された店は、渋谷駅から徒歩5分のところにあった
白壁とレンガ造りのオシャレな外観で、入り口にはイタリア国旗が飾られている

店内に入ると奥の横長のテーブル席からこちらに向かって手を振る女性が目に入った

「こっちこっち~!
 待ってたよ~こっち座って」

出迎えた堤は身長が高く、東南アジア系のハーフで褐色の肌に大きな黒い目が特徴的な女性だった

「堤さん!
 間野ちゃんも連れてきました」

「こんばんゎ間野です」

美加に紹介され、早紀は堤にペコっと頭を下げた

「こんばんゎ堤でーす。
 内線では何度も話したこと
 あるよね!」

「はい!
 何度もパソコンのことで教えて
 頂いてますけど、
 面と向かってお会いするのは
 初めてです」

「美加ちゃんからもよく話を
 聞いてるから初めて会った気が
 しないねー!
 改めて宜しくね!
 さぁ座って」

テーブル席には堤の他に3人男性が座っていた
堤の隣に座っていた男性が堤の向かいの席に移動して、
女性3人男性3人がそれぞれ相向かいに横並んだ

早紀は端の席に座った
向かいには色白でニコニコ笑っている男性が座っている

(あれ…?この人どこかで…)

早紀は目の前に座る男性の顔に見覚えがあった

「あ、ごめん
 一緒に飲んでたこの人達、
 紹介するね」

堤は追加のビールを人数分オーダーし終わると自分の向かいに座る男性から紹介を始めた

「この人
 同じシステムの北島くん
 私と同期」

「あ、どうも北島です」

北島と名乗ると軽く会釈をした
大柄で短髪、メガネの奥の目は細い
テキパキ話す堤とは対照的におっとりした印象だった

「そして、真ん中が
 システムの先輩桃井さん」
 
「桃井です。宜しくね♪」

そう言ってニコリと笑って見せた桃井は、向かいに座った美加にもう一度笑いかけた

「美加ちゃんはこの前一緒に飲んだ
 から桃井さん知ってるけど、
 間野さん…早紀ちゃんは
 桃井さん初めて、かな?」

堤はそう言って早紀と桃井の顔を交互に見た

「いえっ、パソコンの調子が
 悪くなった時に
 何度か直しに来て下さったことが」

早紀が笑顔で答えると

「うん、俺も覚えてるよー♪
 直すついでに少しカスタマイズ
 してあげたら凄い喜んでくれ
 たよね〜」

と桃井もニコニコ笑いながら答えた

「そっかそっか、
 そこも接点ありなのね♪
 よかった
 そして最後、
 一番端にいるのが」

堤がそう言うと早紀の前に座る男性は姿勢を正した
< 53 / 70 >

この作品をシェア

pagetop