密星-mitsuboshi-
早紀は目の前で背筋を伸ばしたその仕草を見てその人物が誰か思い出した

(この人…確か!)

「もしかしたら
 美加ちゃんも早紀ちゃんも
 知ってるかもしれないけど
 彼は管理部の」

「管理部の三木です」

堤が言い終わる前に名乗ると、
三木は人の良さそうな顔で笑った
色白の顔に切れ長の目が笑うと少しだけ垂れて優しい印象を受ける

仕事中に渡瀬に目が行く早紀は、
渡瀬のデスクに業務報告をしに来たところや、ミーティングしているところを何度か目にしていた

(よりによって管理部って…)

知らない人が見たら3対3の合コンにしか見えないこの飲み会
渡瀬に関わる人間がいることは早紀にとって心配の種にしかならない
渡瀬の耳に入り、誤解をされても困るし
何かボロを出し、渡瀬との関係を勘付かれても困る

どうしても構えてしまう早紀に美加も、
分かるよと言わんばかりにうなづいた

「河野さんも間野さんも
 審査部ですよね
 お見かけしたことあるな~と
 思いました」

三木は美加と早紀の顔を交互に見てそう言うとまたニコニコと笑った

とりあえず美加も早紀も笑顔で会釈するも、早紀はどうしても三木の顔をまっすぐ見られなかった

「三木君は管理部だけど、
 私や北島君と同期で仲良しなの。
 三木くんは美味しいお店たくさん
 知っててね、
 このお店も三木くんが教えてくれ
 たのよ~」

堤がそう言い終わるのと同時に人数分のビールが運ばれてきた
北島がそのビールをそれぞれの前に配ったのを見計らって

「さぁ♪乾杯しましょう
 かんぱーい!」

堤の明るい声が響き、ジョッキの縁と縁が鳴り合った

皆がほとんどジョッキを空にすると、堤は料理の追加と赤ワインを注文した

堤はよくしゃべり、よく飲み、よく食べる
だがそうしながらも周りを見ながら人一倍気を使い、
お酒が切れたりツマミがなくなったり、会話なく無言になるなどといった場がシラケるような事をさせない人だった

「そう言えば!
 美香ちゃんはいないの
 知ってるけど、早紀ちゃんは
 今彼氏いるの?」

「えっ?えぇっと…」

いきなり堤から振られた質問に、
どう答えたらいいか戸惑った早紀
すかさず美加が横から

「あ~間野ちゃんも今は彼氏が
 いないんですよ。
 いたら日曜日に女2人で買い物なんか
 してないですよぉ~
 ねっ?」

笑顔でスラスラと代弁して周りの笑いを誘い、チラッと早紀を見た

「確かにそぉですね~
 私も今はいないんです」

美加の視線を受け、合わせて返事をした

「2人もいないんだ!
 こんな可愛い子2人も勿体無いー!
 ね~、そぉ思わない?」

堤は驚きながら目の前でジョッキ片手にピザを頬張る北島に振った
北島が言葉を発さずにうんうん頷くと
隣から桃井がすかさず乗り出してきた

「本当に勿体無い!
 俺らなんか、マニアだの
 オタクだの思われて
 全然女の子が寄ってこないから
 独り身多いけど
 2人みたいな可愛い子が彼氏いな
 いなんて…俺ならほっとかない!」

桃井の美加へのアプローチがストレートなことに堤や北島は、また言ってるよとばかりに笑っていた

「桃井さんね、この前美加ちゃんと
 ご飯食べてからずっーと
 可愛い可愛いってうるさいのよ~」

そんな桃井のテンションに、堤はそう言って少し呆れ顔で茶化した

「ちょっ!堤ぃ~
 お前余計なこと言うなよ!
 ほんっとに頼むよぉ~」

照れながら慌てる桃井にその場の皆から笑いがこぼれた
早紀は美加をチラッと伺うと
その表情は戸惑いながらも嫌ではない様子だったことになんだか笑みがこぼれた


「そう言えば桃井さんっ、
 今回のシステム改善
 本当に助かりました!」

三木がワインを注いだグラスを桃井の前に置いて勧めた

「おぉ、今回のは本当に大変だったよ
 できるだけ早くって無理難題
 言ってくれちゃって」

桃井はそう言いながらグラスのワインを一気に飲み干した

「本当にありがとうございます
 渡瀬課長も満足してました」

三木は満面の笑顔で桃井に軽く頭を下げた



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