プリテンダー
昼食が済んで、コーヒーを淹れ直した。

なんだかんだ言っても目の前でお腹を空かせているのは気の毒で、イチキの御曹司が手土産に持ってきた老舗の高級そうな洋菓子を一応お茶請けに出してみた。

「それで…穂高の用は済んだ?私たちはこの通り仲良く暮らしてるけど。」

確かに僕と杏さんの暮らしぶりを見に来たのなら、イチキの御曹司の用はもう済んだはずだ。

それなのにこの御曹司はいつまでここに居座るつもりだろう。

これ以上ここに居られたら、どんなに気を付けても思わぬところでボロが出るかも知れない。

そろそろ帰って欲しいんだけどな。

「一緒に暮らしているのはわかった。でも婚約者というより家政婦みたいだな、彼は。」

イチキの御曹司はまたバカにしたようなイヤな笑い方をして僕を見た。

ホントに失礼な奴だ。

家政婦みたいって……あれ?

一緒に暮らしているとは言え寝食を共にしている以上の事は何もないし、僕は家事全般をしているだけだから、確かにそうかも。

「私は何もできないし、章悟が得意だからやってくれているだけ。それのどこがおかしい?」

「いや、おかしいとは言ってないよ。」

明らかに目がそう言ってるよ。

「気が済んだならもう帰って。」

そうだそうだ、早く帰れ!

とっとと屋敷に帰って、元三ツ星レストランのシェフにその腹の虫を黙らせてもらえ!!


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