プリテンダー
めちゃくちゃだ。

女性としての杏さんの意志とか、社会人としての立場とか、いろんな物を無視しているじゃないか。

なんか猛烈に頭に来た。

このボンボン、泣かせてやる。

僕は立ち上がって、杏さんを抱き寄せた。

「だったら何も遠慮なんかすることないね。」

「えっ?」

杏さんは驚いて僕を見上げた。

「筋を通すために、子供はちゃんと許しを得て結婚してからと思ってたけど、お祖父様がそうおっしゃるのなら何も問題ないよね、杏。」

「えっ…あ…うん。」

「嬉しいな。僕は早く子供が欲しかったんだよ。」

僕は杏さんを抱き上げて、イチキの御曹司の方を見た。

「じゃあ市来さん、そろそろお引き取り願えますか?僕はさっきから早く杏と二人っきりになりたくて、市来さんがお帰りになるの待ってるんです。」

「失礼だな、君は!!」

イチキの御曹司は腹が立ったのか、勢いよく立ち上がった。

悔しそうな顔。

男の泣き顔なんて見たくもないけど、高慢な態度を崩さないこの男の屈辱に歪む顔を見るのは気持ちがいい。


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