プリテンダー
「…おい、いつまでこうしているつもりだ。」

僕の腕の中で、杏さんが低く呟いた。

いつものように強気な態度でそう言ってはいるけど、まだ顔が赤い。

面白いな。

僕は更に強く抱き寄せてみた。

「杏さんがお望みならいつまででも。」

「調子に乗るな、早く降ろせ!」

杏さんは足をバタバタさせて抵抗した。

恥ずかしがってるくせに、いつも通り振る舞おうとする偉そうな態度がかわいい。

もっとからかってみようか。

「なんならベッドに降ろして、子作りの練習でもしてみますか?」

「ばっ…バカッ!!」

杏さんの平手が僕の頬に飛んできた。

「……冗談ですよ。」

僕は杏さんをソファーの上に降ろして、ジンジンと痛む頬をさすった。

やっぱりダメか。

もちろん本気で言ったわけじゃないけど。

「なんだかすごい事言ってましたね。」

「ああ…そうだな。」

杏さんは腕組をしてため息をついた。

「お祖父様はきっと最初から、私が鴫野と付き合っていると言うのは嘘だと見抜いてたんだろうな。」

「そうなんですか?」

「嘘だとわかっているから、本気でなければできないような事を言ってきたんだろう。」



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