すべてが思い出になる前に
仕事終わりに更衣室から出てきた友理奈は、歩いて駅の方へ向かっていた。
「堤さん‼︎」
声をかけられ後ろを振り向くと、あのパイロット訓練生が走って来るのが見えた。
「お疲れ様、那須さん」
息を上げるパイロット候補生の那須は友理奈さんの隣に並んだ。
「堤さんは地下鉄通いですか?」
「ええ、那須さんも?」
「はい。なんか意外ですね、タクシーで通ってるのかと思ってました」
「私ってそんなイメージあるの?タクシーは終電を逃した時しか乗らないから‼︎」
那須の冗談に少し笑ってしまう友理奈の笑顔を見て、那須も俯き加減でつられて笑っていた。