すべてが思い出になる前に
ふと左に首を傾けると、紺色のセーラー服を着た友理奈が立っていた。声をかけようと、全く涼太の存在に気づいていない友理奈にそっと近づいて行った。
「友理奈‼︎」
涼太が声をかけると友理奈は驚いてハッと目を大きく見開いた。
友理奈は一度目を合わせたのちに涼太が右肩にかけていたテニスバッグに視線を移した。
「またテニスが出来るようになってよかったね‼︎一時はどうなるかと思ったよ。最近、すごく調子がいいって翼がメールが来たんだよ」
「まぁな。この肩が夏以降も持つかどうか…」
涼太の心配をよそに友理奈は怪我をした肩をポンポン叩き、確認をした。