リナリア
* * *

 昼食は手作り弁当だ。自分で作るお弁当ほど味気ないものはない。

「昼休みは無理でも、ご飯食べてる間は答えられるよね、名桜?」
「…はい。」

 七海に捕まった。捕まるとわかっていたけれど。蒼までやってきた。

「伊月知春はなんでお前につっかかってんの?」
「…ストレートだね。そんなの私が知りたい。」
「なんかしちゃったの?撮影で。」
「…多分?怒ってた感じではなかったけど。」
「手引っ張られてたでしょ?」
「…はい。」
「そもそも学校に朝からいること自体レアなのにさ、それでなんかワケありっぽそうに連れて行くとこ見たら…ねぇ?」
「七海が言いたいことはわかるよ。あの人がどういう人なのかよくわからないけど、少なくとも芸能人の自覚が薄い人だってことはあの一件でよくわかった。」
「大丈夫なのか?」

 珍しくやや低い、蒼の声。そんなに心配そうな顔をするタイプでは本来ないというのに。名桜は申し訳なくなって、極力笑顔を浮かべて答えることにする。(笑顔がうまくできているかは自信がない)

「大丈夫だよ。悪い人ではないと思うし。今後の仕事がまた同じになるっていう報告…で合ってるのかな、お父さんに確認してないからわからないけど、そんなことを言われただけだから。」
「なら…いいんだけど。」
「心配してくれてありがとう。って行かなきゃ…。ごちそうさま!」

 慌てて食べ終わった弁当箱を片付ける。そして急いで教室を後にした。

「…絶対伊月知春のとこでしょ。」
「おそらくな。」
「心配?」
「そりゃあ、幼馴染としては心配だろ。名桜は目立つのが好きなタイプじゃない。」
「でも、伊月知春との仕事をすでに1つ終えてて、今後もあるとなると…。」
「何かあったら助けるだけだろ、おれたちにできる範囲で。」
「…うん。」
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