リナリア
最後の文化祭
あっという間に文化祭当日になった。文化祭は全3日日程で、2日目のみ一般開放される。3日目は後夜祭でキャンプファイヤーが行われる。
 今日の名桜のスケジュールは、午前中が自分のクラスの受付係で、午後2時からは知春のクラスのシンデレラの観劇だ。
 『シンデレラ』のチケットは言わずもがなプレミアチケットだった。(知春が出る公演自体が1日目、2回分のみということもあって、1日目の分のチケットだけ倍率がとんでもないことになった)名桜も申し込みはしようと思っていたが、そんな矢先に知春からもらった。

ー ー ー ー ー 

「名桜、興味ある?」
「え、もちろんありますけど、いいんですか?」
「両親仕事だし、別に観に来てほしいとかもないしね。なんなら俺の演技なんてテレビで観てるし。名桜なんて関係者なんだから、チケット渡してもいいくらいだと思うけど。」
「倍率、とんでもないことになってるんですからね!私にさらっと渡せないですよ。」
「まぁ、楽しみにしててよ。主にたくだけど。」
「楽しみですよ。知春さんの生の演技を観るのはこれが初めてですから。」
「あー…そっか、そうなるか。なんか変な感じだなぁ、上手く言えないけど。」
「変ですか?」
「だって、出会った場所は学校じゃないのに、演技見せるのは学校ってさ。」
「ある意味、高校生の知春さんの演技を観れる方がレアですから。…楽しみです。撮影できないのが残念ですが、目に焼き付けます。」

ー ー ー ー ー

「名桜、いいなー!」

 口が大きく裂けたメイクを施された七海がそう言った。七海は午前中、お化け役だ。

「あーのプレミアチケット持ってんだもん。」
「そんなに見てぇのかよ。」
「そりゃ見たいでしょ!伊月知春の演技を生で見れるなんてさ!!!」
「とりあえず、午前中は仕事頑張ろう。午後は今日は一緒に回れないけど、明日は仕事ないから大丈夫!」
「今日はシンデレラ観たら仕事行くんだもんね。」
「…ちょっとご指名を受けちゃったからね…。」

 今日は名桜の父ではなく、名桜に入った仕事の依頼が控えている。そのため、シンデレラが終わったらスタジオに直行だった。
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