リナリア
あの人だけは本当
* * *
「よし、じゃあ行くよ、なっちゃん、ちーちゃん!」
「あの…本当に大丈夫でしょうか?」
「まぁバレたらバレたで大丈夫でしょ、3人だから。」
「そうそう。これが私とちーちゃんだけだったら特大スクープになっちゃうけど!」
「…それが本当に怖いんですよ…切り取って撮影されたら私なんていなかったことにされてしまいますし。」
「なっちゃんをいなかったことになんて絶対しないから大丈夫。」
そう言って、黒縁眼鏡をかけてニットのベレー帽を被った彩羽は、名桜の腕にぎゅっと抱きついた。
「い、彩羽さん?」
「私はなっちゃんとくっついて歩くから、これなら女友達と出歩く彩羽ちゃんの出来上がりでしょ?」
ふわりと香る、少し甘くて女性らしい香りに名桜は芸能人のパワーを感じる。立っているだけでいい香りがするし、歩くだけで様になってしまう。それが彩羽や知春なのだということを、こうやって普通のショッピングモールに来てより一層思う。
撮影最終日の前日。宿泊ホテルから徒歩10分ほどのショッピングモールに3人で来ている。明日は早朝から撮影する関係で前日泊まりこみとなり、本当は名桜は帰って始発で来る予定だった。しかし彩羽が駄々をこねて同じ部屋に泊まりたいと言い出したことによってこうして名桜も泊まることとなっている。宿泊できるからこそ生まれた、閉店時間までの1時間。許可を取って1時間だけの自由時間だ。少し離れた位置に二人のマネージャーがいる。
「閉店まであと1時間…お腹は減ったけど、食べてたら1時間なんてあっという間だもんね。ちーちゃん、したいことある?」
「…うーん。ちょっと何か食べたいなくらいにしか思ってなかったので…。」
「ちょっと!ノリが悪い!じゃあ私がしたいこと、してもいい?」
「彩羽さん、何がしたいんですか?」
「ふふふ~なっちゃん、よくぞ聞いてくれました!なっちゃんを着せ替え人形にしたい!」
「…着せ替え…人形…?」
言葉の意味が分からず、名桜は首を傾げる。そんな名桜を見て、彩羽はにっこりと笑った。
「なっちゃんに似合いそうな服を着せて可愛い~ってのをやりたい!そういうの、高校生とかのときにやりたかったんだけどできなかったからさぁ。現役高校生のなっちゃんの出番だよ!」
「いやでもあの…可愛いのは彩羽さんなので、彩羽さんに着せた方が…ね、知春さん?」
助け船を求めて、名桜は知春の方を向いた。
「よし、じゃあ行くよ、なっちゃん、ちーちゃん!」
「あの…本当に大丈夫でしょうか?」
「まぁバレたらバレたで大丈夫でしょ、3人だから。」
「そうそう。これが私とちーちゃんだけだったら特大スクープになっちゃうけど!」
「…それが本当に怖いんですよ…切り取って撮影されたら私なんていなかったことにされてしまいますし。」
「なっちゃんをいなかったことになんて絶対しないから大丈夫。」
そう言って、黒縁眼鏡をかけてニットのベレー帽を被った彩羽は、名桜の腕にぎゅっと抱きついた。
「い、彩羽さん?」
「私はなっちゃんとくっついて歩くから、これなら女友達と出歩く彩羽ちゃんの出来上がりでしょ?」
ふわりと香る、少し甘くて女性らしい香りに名桜は芸能人のパワーを感じる。立っているだけでいい香りがするし、歩くだけで様になってしまう。それが彩羽や知春なのだということを、こうやって普通のショッピングモールに来てより一層思う。
撮影最終日の前日。宿泊ホテルから徒歩10分ほどのショッピングモールに3人で来ている。明日は早朝から撮影する関係で前日泊まりこみとなり、本当は名桜は帰って始発で来る予定だった。しかし彩羽が駄々をこねて同じ部屋に泊まりたいと言い出したことによってこうして名桜も泊まることとなっている。宿泊できるからこそ生まれた、閉店時間までの1時間。許可を取って1時間だけの自由時間だ。少し離れた位置に二人のマネージャーがいる。
「閉店まであと1時間…お腹は減ったけど、食べてたら1時間なんてあっという間だもんね。ちーちゃん、したいことある?」
「…うーん。ちょっと何か食べたいなくらいにしか思ってなかったので…。」
「ちょっと!ノリが悪い!じゃあ私がしたいこと、してもいい?」
「彩羽さん、何がしたいんですか?」
「ふふふ~なっちゃん、よくぞ聞いてくれました!なっちゃんを着せ替え人形にしたい!」
「…着せ替え…人形…?」
言葉の意味が分からず、名桜は首を傾げる。そんな名桜を見て、彩羽はにっこりと笑った。
「なっちゃんに似合いそうな服を着せて可愛い~ってのをやりたい!そういうの、高校生とかのときにやりたかったんだけどできなかったからさぁ。現役高校生のなっちゃんの出番だよ!」
「いやでもあの…可愛いのは彩羽さんなので、彩羽さんに着せた方が…ね、知春さん?」
助け船を求めて、名桜は知春の方を向いた。