押しかけ社員になります!
「西野はどれにする?」
案内された部屋は個室だった。これならば…、食べる事に関して少し楽になった。
「私は和食にします」
「うん、解った。では二人共、和食でお願いします」
「畏まりました」
グラスに冷たい水を注ぎながらウエイターさんは返事をした。
「失礼します」
畏まらないけど、きちんとした店。なんと言えばいいだろう。お店としてはとてもレベルが高いところなんだと思った。…そんな世界の何を知っている訳では無いけれど。美味しいものを気取らず食べやすいように提供してくれる。そんな感じ?
最初の杞憂はどこへやら。美味しく完食した。
「堪能出来たか?」
「はい!」
「フ、それは良かった。そろそろ出ようか」
「はい…」
食後の珈琲も済んでいた。
お会計で部長はサインをしていた。…スマートな会計。やっぱり部長って何物?
「ご馳走様。美味しかったです。シェフによろしく伝えてください」
「有難うございます。また、お二人ご一緒に。是非、お待ち致しております」
「どうだかな」
部長はこめかみ辺りを人差し指で掻いていた。これは部長の照れ隠しだ。
「あ、ご馳走様でした。有難うございました」
「青柳様はこうおっしゃられておりますが、是非またいらしてください」
「有難うございます。またお会い出来るように、嫌われないように頑張ります」
「…お、これはこれは」
「…行くぞ」
部長はまた私の手を取り歩きだした。私…うっかり余計な事を…大丈夫だったかな。
マネージャーさんは手を振って見送ってくれた。
振り返り、私は頭を下げた。
部長は親しい間柄かも知れないが私は違う。きちんとしないと部長の顔を潰してしまう。
「美味しかったです、部長。ご馳走様です」
「ん。また来てみるか?」
「はい。そうですね…まだ中華もイタリアンもありますから。それにディナー以外のメニューもありますよね?」
「それを言うと、かなり通い詰め無いと全メニュー制覇は出来ないぞ?」
あ、お値段がいくらするかも解らないんだった。
「…追い追いに」
「ん?また来よう。変な気は遣うなよ?」
「はい…」