押しかけ社員になります!

「西野はどれにする?」

案内された部屋は個室だった。これならば…、食べる事に関して少し楽になった。

「私は和食にします」

「うん、解った。では二人共、和食でお願いします」

「畏まりました」

グラスに冷たい水を注ぎながらウエイターさんは返事をした。

「失礼します」


畏まらないけど、きちんとした店。なんと言えばいいだろう。お店としてはとてもレベルが高いところなんだと思った。…そんな世界の何を知っている訳では無いけれど。美味しいものを気取らず食べやすいように提供してくれる。そんな感じ?


最初の杞憂はどこへやら。美味しく完食した。

「堪能出来たか?」

「はい!」

「フ、それは良かった。そろそろ出ようか」

「はい…」

食後の珈琲も済んでいた。
お会計で部長はサインをしていた。…スマートな会計。やっぱり部長って何物?

「ご馳走様。美味しかったです。シェフによろしく伝えてください」

「有難うございます。また、お二人ご一緒に。是非、お待ち致しております」

「どうだかな」

部長はこめかみ辺りを人差し指で掻いていた。これは部長の照れ隠しだ。

「あ、ご馳走様でした。有難うございました」

「青柳様はこうおっしゃられておりますが、是非またいらしてください」

「有難うございます。またお会い出来るように、嫌われないように頑張ります」

「…お、これはこれは」

「…行くぞ」

部長はまた私の手を取り歩きだした。私…うっかり余計な事を…大丈夫だったかな。
マネージャーさんは手を振って見送ってくれた。
振り返り、私は頭を下げた。
部長は親しい間柄かも知れないが私は違う。きちんとしないと部長の顔を潰してしまう。


「美味しかったです、部長。ご馳走様です」

「ん。また来てみるか?」

「はい。そうですね…まだ中華もイタリアンもありますから。それにディナー以外のメニューもありますよね?」

「それを言うと、かなり通い詰め無いと全メニュー制覇は出来ないぞ?」

あ、お値段がいくらするかも解らないんだった。

「…追い追いに」

「ん?また来よう。変な気は遣うなよ?」

「はい…」
< 108 / 192 >

この作品をシェア

pagetop