振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~
マリアンヌは美しいのだが、持参金を持たせてやれなく、また我が家の家名ではあまり政治的に有利にならないため、これぞという男性からは求婚されなかった。かと言って、愛のない結婚をさせるのもかわいそうなので、勧めなかった。このままスコットランドに行くと、あの子はもうロンドン社交界でのチャンスは逃してしまう。しかしもう年も年だった。もはや結婚市場では、相手にされなくなってくる年齢だ。それならもはや一層、スコットランドに引越、あの子をそこら辺のいい青年と結婚させるのが幸せだろう。
うん、やはりスコットランドに引越させよう。父親のジョンはそう心に決めると、小躍りして部屋を出た。


マクレーン家の女性達は、談話室に集まって、それぞれ楽しく過ごしていた。リリーとメアリーはそれぞれ編み物をし、靴下とポシェットを作っていた。ポリーとケイトは、それぞれ本を読んでいた。本は最近流行りの怪綺談だった。そしてマリアンヌはフランス語の勉強をしていた。ポリーに教えるためであった。
そうして過ごしている部屋に、父親のジョンが入ってきた。
父は、「あー、げほん」と咳払いをした。皆が振り向くと、「あー、みんな聞いてくれ。実は大切な話があるんじゃよ。こっちの方へ集まってくれ。」と言った。みんなが父の周りに集まった。
「これから話ことは、大事な話だ。だからお前たちの気持ちを尊重したいのだが、無理強いはするつもりはない。実はスコットランドに引越そうかと思うんじゃが、どうだろう。スコットランドのジョゼフ叔父さんの一家が離れの屋敷を貸してくれるとのことだ。それで、引越をしたいのだが、どう思う?」姉妹たちは、驚きびっくりして声を上げたり、ざわざわと話し始めました。「私はいいわよ。」末っ子のポリーは言いました。
「新しいところって楽しそうだし。」
「私は嫌よ。」とケイトは言いました。「友人と別れるのは嫌。」二女のリリーも「私も嫌」「ロンドンから離れたくないわ。社交界に出られなくなるし。」三女のメアリーは、「私はどちらでもないわ、お父様」と言いました。
そして、長女マリアンヌは、直感的にこれは財政的に窮しているからだわ、と悟りました。それで、「ええ、いいわよ、お父様。それはとてもいい案だと思うわ。」と言いました。長女マリアンヌがそう言ったので、父親のジョンは見つめました。マリアンヌも父を見つめ返しました。そしてお互いに何を考えているのか、わかりました。
マリアンヌは、「みんな、スコットランドって楽しそうじゃない。ぜひ行きたいわ。私自然に囲まれてすごしたかったの。私、都会は苦手だし。ほら、昔ジョゼフ叔父さん一家とはよく遊びに来てもらっていたじゃない。最近は会ってなかったけど。でも、あの一家は、陽気で親切な家だからきっとみんな楽しく過ごせるわよ。」と言うと、ポリーとメアリーも「そうよ、引越、引越。引越って楽しそうだし。新しいところに行きたーい。」と言い始めました。
「ええー、いやよ。私の社交界デビューはどうなるの?」リリーが怒りながら、父親に尋ねました。
「あー、それじゃあ。うん、そのー、今いい案が思いついた。その間だけ、いとこのハリーの家に滞在するのはどうかね。」
「うーん、そうね。ハリーがいいと言えばいいけど。」「そうか、そのシーズンだけ、家を借りることもできるし。どちらにしろ、何らかの方法でロンドンに滞在できるわ。」とマリアンヌは言いました。
リリーはギロっと姉の方を見て、「ふーん、お姉さまはもうロンドンにいなくていいの?」と嫌みたらしく言いました。
マリアンヌは、「ええ、もういなくてもいいわ。私田舎の方が性格に合っているから。」と静かに言いました。「ふーん、だったら、いいけど。しょうがないわ。それならスコットランドにいってもいいわ。」
そうして、マクレーン家は、この年の夏の終わりにスコットランドに旅立つことが決まりました。
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