振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~
3
ケヴィンは、国の財政部門を扱う機関に勤務していた。
イギリスは、今、大英帝国として栄え、植民地からの貿易で黒字だった。今ほど、国にお金が入ってきたことはないので、宮廷も国民も浮かれていた。
しかしケヴィンは、このお金を将来長くに渡って、ずっと金庫に置いておかなければならないと思っていた。金があると思って、湯水のように使ってしまうと、あっという間に国の財政は危機的な状況に陥るだろう。
そして町では飢えた国民がたむろすることになる。
だから、ケヴィンは、年度の予算が閣議で決まっても、財務機関としてどこにどれだけ予算を振り当てるか決めるのに慎重を期していた。ケヴィンの他数名が(主に年配者で、みんなじいさんばかりだった。)、予算の割り当てを決定していたが、彼は他の者が、自らの影響力を行使するために、予算を勝手に決めるのを阻止しなければならなかった。ケヴィンは、この荷が重い骨の折れる仕事を毎日、毎日こなさなければならなかった。
ケヴィンは、またよくロンドンを散策するのが好きだった。
いろんな商店が並んでいる華やかな大通りだけでなく、裏道のスラム街にも行った。そこでの人々の様子は、本当にこの国は富んでいるのだろうか、と思わされるものだった。ケヴィンは、道にゴミがあふれ、臭いが鼻につくここでの様子を見て、この状況を何とか改善したいと思っていた。
しかし国の財政を独断で決定する権利がケヴィンにあるわけがなく、議会と国王しかこの権利は持っていなかった。
ケヴィンは、自分の無力さを常に感じさせられていた。
ケヴィンは、あの華やかな夜だったジョージ王子の誕生祭に思いを馳せた。美しく着飾った人たち。そして、ここの人たち。この世はなんて不条理なんだろう。ケヴィンは。この世界を嘆いた。

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