その背中、抱きしめて 【上】
林から湖畔に出るところで手を離そうとすると、高遠くんの指に力が入った。
「手、離さないと」
どうして離さないの?
こんな姿見られたら、みんなが大騒ぎするよ。
特に高遠くんは女バレにも大人気なんだし。
「このままでいいよ」
「…でもっ!」
1歩前を歩く高遠くんが立ち止まり私の方に振り返る。
「先輩に他の男が寄らないように、俺のものだって見せつける」
えぇっ!?
「私になんて男子寄ってこないから!今までだってそんなこと全っ然なかったし」
高遠くんの眉がピクッと動く。
「先輩、自覚ないんですか?先輩結構人気あるんですよ。部内だからみんな遠慮してるだけで」
みんなマネージャーだから仲良くしてくれたり頼ったりしてくれてるんだよ。
高遠くんこそ、そんなの思い込みだよ。
「俺の話信じてないみたいですね。あんまりこういうの言いたくないけど、信じないなら先輩がうちの部の男たちからどんな目で見られてるか教えてあげますよ。男だけ集まれば、先輩の体の線がどうだとか、キスしたらどういう風になるかとか、抱いたらどんな風に啼(な)くかとか、そんな話ばっかしてんだよ。先輩はそういう対象で見られてんだよ。だから、もう先輩には近寄らせない」
鬼気迫る雰囲気があった。
静かだけど、すごく怒りが現れてた。