その背中、抱きしめて 【上】
試合が始まった。
隣の高遠くんをチラリと見ると、難しい顔をしてる。
(どうしたんだろう…まだ試合始まったばっかりなのに)
「高遠くん、どうかした?」
「ん」
「なんか難しい顔してる」
高遠くんは長い脚を組んで(もちろんギプスしてる脚が上)脚に肘をついて顎を乗せた。
「この試合、ヤバそう」
「え?ヤバそうって…」
どういうこと?
負けそうってこと?
「たぶん俺の怪我のせいだと思うんだけど、みんなかなり敵対心剥き出し過ぎて試合前の練習から空回りしてる感じがする」
たしかに…。
ピピーッ。
サーブをネットに引っ掛ける。
「100%の力で打ちにいってる。80%の力で十分な場面なのに、その冷静な判断が出来なくて感情的になってる。このままじゃ負ける」