その背中、抱きしめて 【上】
「おーい、翔ー!」
前田くんが走って近づいてくる。
「あ、ゆず先輩も。てか珍しすぎる!これはゆめか!夢なのか!」
前田くんが自分のほっぺたをつねる。
「痛い…夢じゃない…」
どうしたの、夢とか夢じゃないとか。
せわしなくて面白い子だなぁ、ほんと。
「お前がいくら先輩とはいえ女子と喋るとか、3週間毎日一緒にいたけど初めてだ…。偏屈なお前に声をかけてくれる先輩…優しすぎます」
両手で顔を覆う前田くん。
いや、違う。
声をかけたのは私じゃないし。
「違う違う。高遠くんの独り言なんだよ」
「…独り言?」
前田くんが顔を上げる。
「そう、独り言」