その背中、抱きしめて 【上】



駅には着物姿の女の子もちらほらいる。

(いいなぁ着物…)


「あれ?着物じゃないんだ」

中低音の声に振り返る。

「楽しみにしてたのに」

ちょっと口角を上げる高遠くんがそこにいた。


「着物なくって…浴衣ならあるんだけど。私も着てきたかったんだけどさ」

あぁ泣きたい。


「じゃあ夏楽しみにしてる」

そう笑って高遠くんが手を差し出す。

私も手を近づけると、優しく指を絡めてくれた。


元旦の午前中、初詣客で電車も満員状態。

ドアの所に立つ羽目になったけど、高遠くんが周りからガードしてくれてるのがわかった。

「結構混んでるね」

「平日の朝以上だね。先輩大丈夫?苦しくない?」

「大丈夫だよ」

全然苦しくなんてないよ。

だって高遠くんが空間作ってくれてるじゃん。

その優しさに顔がほころぶ。


「何笑ってんの?」

「優しいなぁって思って」

高遠くんのコートを指で掴みながら見上げたら、あれれ?なんだか顔が赤い…?

あまり表情が変わらない高遠くんの照れてる顔、可愛いんだよなぁ。




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