その背中、抱きしめて 【上】
「いいよ、高遠くん家でやろう」
「そ?じゃあ朝おいで」
ほら、下心なんてあるわけないんだよ、高遠くんに限って。
きっとあれでしょ?
カフェとかファミレスだと周りの音とか声が気になるから、静かな家でって言ってくれてるんだよね。
だったらお言葉に甘えて、お邪魔させてもらおうじゃないですか。
-----朝。
部屋を出て階段を下りると、お父さんとお母さんが何やらバタバタ忙しそう。
「あ、柚香おはよう。じゃ、お父さんとお母さん行ってくるからね」
「へ?どこに?」
「何言ってるの。週末旅行に行ってくるって言ってあったでしょ?戸締りしっかりするのよ。行ってきます!」
バタンと勢いよく玄関のドアが閉まった。
(そういえばそんなこと言ってたっけ…。だったらちゃんと昨日の夜にもう1回言ってよ)
「朝から騒がしい…。あ、お父さんとお母さん行ったの?」
お姉ちゃんが不機嫌そうに下りてきた。
「私、今日彼氏のとこ泊まるから帰らないよ」
「はぁっ!?」
何それ!
私一人で留守番してろって?
「柚香、翔くんとこで勉強するんでしょ?そのまま泊まって来ちゃえば?こんな時じゃなきゃ外泊とかできないし」
お姉ちゃんがしたり顔でウインクする。
「何言ってんの!!!ちゃんと帰ってくるよ!」
「いいじゃん、泊まっちゃいなよー」
お姉ちゃんのニヤニヤが止まらない。