その背中、抱きしめて 【上】
「先輩の髪から俺と同じ匂いがする」
高遠くんが乾いた私の髪に顔を近づける。
「これヤバイな…思ったよりドキドキする」
後ろからぎゅっと抱きしめられた。
数秒後、ふっと抱きしめられてた腕の力が緩んで
「ご飯にしよ」
って頭をポンポンって優しく叩かれた。
”これヤバイ”って…?
同じシャンプーの匂いのこと?
高遠くんもドキドキしたりするんだね。
ダイニングテーブルに向かい合って座ってご飯を食べる。
「おいしーーーーーーーーー」
高遠くんの作ったカレーはお世辞抜きにほんとに美味しくて、一口食べた途端に口いっぱいに幸せが広がった。
「別に普通でしょ?」
「ううん!おいしい!ほんとおいしい!私これからは1番好きな食べ物は高遠くんのカレーにする!」
「んな大げさな」
高遠くんが苦笑した。
大げさなんかじゃないよ。
本当においしいんだもん。
カレーのおいしさも、このシチュエーションも幸せすぎて涙が出そう。
「ごちそうさまでした。はぁ…お腹いっぱい」
もう大満足で、しまりのない笑顔しか出ない。
「あ、高遠くん。私食器片づけておくからお風呂入ってきてね」
「ほんと?ありがとう、じゃあお願いしようかな」
「まかせてー」
好きな人が食べたご飯のお皿を洗うことが、こんなに幸せなのは何でだろう。
家で皿洗いするの大っ嫌いなのに。