その背中、抱きしめて 【上】
向かい合ってテーブルにつくと、高遠くんは並べられた料理を見ながら優しそうな顔をしていた。
「一応味見はしたから大丈夫だとは思うけど、口に合わなかったらごめんね。私、料理得意じゃないから」
人に食べてもらうってすごく緊張する。
昨日の焼きうどんよりも何倍も緊張してる。
「朝からこんな何品も作ってくれたんだ。ありがとね、先輩」
鮭を焼いて大根おろしを添えて。
だし巻き卵を焼いた。
ほうれん草をおひたしにして、生野菜のサラダには明太子ソースを作った。
お味噌汁は玉ねぎと大根とワカメで具だくさん。
それだけの食材が冷蔵庫に入ってた。
高遠くんがちゃんと自炊してる証拠だね。
勉強も部活もあるのに、家のことまで…しかもいつも1人でご飯食べてるなんて。
想像しただけで胸がきゅうっと切なくなった。
ご飯を食べ始めた高遠くんに恐る恐る聞いてみる。
「味…大丈夫?」
ネットで検索したレシピ通りに作ったし、一応味見はしてみたから大丈夫なはずだけど。
それでもやっぱり緊張する。
「うん、うまい。俺、ほんと昨日から幸せ。先輩はずっとそばにいるし、先輩がこうやってご飯作ってくれるし、それを一緒に食べれるし。ずっと毎日こうだったらいいのに」
言葉の通り、高遠くんは本当に幸せそうな穏やかな顔をしてる。
私だって毎日見てたいよ、こんな高遠くんの幸せそうな顔。