その背中、抱きしめて 【上】
好きな人と一緒にいる時間は本当にあっという間で、家に着く時には空はだいぶ暗くなってきていた。
(あーあ…もっと一緒にいたいなぁ…)
しょんぼりしながら送ってくれた高遠くんにバイバイして背を向けて門扉に手をかけた。
「先輩、待って」
呼ばれて振り向く前に、首に冷やっとしたものが触れた。
(なに…?)
シャラっと小さな音がして、ほんの少しだけ首に重みを感じる。
首に当てた手に触れるネックレス。
「これ…」
「指輪用のネックレスもあるからどうしようかと思ったんだけど、やっぱ付き合ってる以上ネックレスはあげないとね」
付き合ってる以上?
ネックレスはあげないと?
何で???
(あ…!)
気付いて一気に顔が熱くなる。
雑誌に書いてあった。
男の子が女の子にネックレスを贈る意味。
(″独占″とか″束縛″とか…)
「俺のものっていう印」
馬の蹄の形をした、指輪とお揃いのピンクゴールドのネックレス。
「あれ?アクアマリン…?」
蹄に埋め込まれた水色に光る石は、3月の誕生石のアクアマリン。
「俺も買う時に聞いて初めて知ったんだけど、アクアマリンって『幸せな結婚を約束し、たとえ夫婦の危機が訪れても仲直りをさせてしまう魔力を秘めている』んだって。将来安泰だね、先輩」
高遠くんが笑う。
高遠くんのもので、しかも将来安泰って…
「ずっと高遠くんといれるってこと?」
カフェであんだけ泣いたのに、また涙で高遠くんの顔が見れなくなる。
しかも今度は泣き笑い。
「そういうこと」
会心の笑顔の高遠くんにぎゅって抱きしめられて、泣き笑いから号泣になった。