その背中、抱きしめて 【上】
「いいなぁ翔先輩、こんな可愛い彼女がいてー」
「俺も高校行ったら彼女できっかなぁ」
ちょっと声のトーンを落とした2人が、まだまだ高いテンションで話し続ける。
(ていうか、可愛いなんて…超平凡顔なんだけど)
「最近の中学生はお世辞も上手だね」
高遠くんに耳打ちする。
それが聞こえたみたいで、背の高い方の子が
「お世辞じゃないですよ。普通に可愛いと思います。美人っていうより可愛い系」
ってニコニコしながら言ってくれる。
女子が喜ぶことが言えるなんて、なかなかやるわね。
そして
「だから翔先輩好きになっちゃったんですよね!」
って高遠くんに、今度はニヤニヤしながら話を振る。
高遠くんをからかうとか難易度の高いこと平気で出来るなんて、よっぽど先輩後輩で仲がいいんだなぁ。
「ばーか。中学のころはまだ憧れてただけだよ」
高遠くんが肩ひじつきながら鼻で笑う。
「でも超絶ブサイクだったら憧れないっすよね?可愛い子がすごいスパイク打ってるから憧れたんでしょ?」
「ビンゴ!」
もう1人の子もノッてくる。
私、だんだん恥ずかしくなってきた…。
「くだらないことばっか言ってないで、お前らちゃんと名乗れ」
呆れ顔の高遠くんが話を変えた。