その背中、抱きしめて 【上】
「えーっ?その呼び方、翔先輩の専売特許ってやつですか?いいじゃないですか、減るもんじゃないんだし」
桜井くんが粘るも、高遠くんは
「減るからダメ。諦めろ」
って、意地悪く笑った。
なんか高遠くん、先輩してるなぁ。
中学の頃もうこうやって後輩から慕われて、高遠くんの周りには仲間が集まってたんだろうな。
「そういえば、ゆず先輩も練習参加してるんですよね?」
相川くんと目が合う。
「試合形式の練習の時な」
高遠くんが答える。
「男に混ざってやってんですよね?すげぇ!翔先輩、ゆず先輩やっぱすごいんですか?」
相川君が興奮したように、今度は高遠くんに質問する。
「明日から来るんだから、自分の目で見てみ。…ただ…」
高遠くんは少し間を置いて
「すげぇよ」
って、流し目で私を見ながら片方の口角を上げた。