その背中、抱きしめて 【上】
相川くんと桜井くんは明るくてポンポンいろんな話題が飛び出してくるから時間があっという間に過ぎ去って、気付けば夕方になっていた。
「あ、もうこんな時間か。先輩、そろそろ帰ろ」
高遠くんが時計を見て、私に言う。
相変わらず私が明るいうちに家に着くように気を遣ってくれる。
(過保護なんだから…)
ふっと笑っちゃう。
ファミレスの外で、2人にバイバイする。
「じゃあ、明日からよろしくね。1年生レギュラー期待してるからね」
「頑張ります!」
2人と別れて高遠くんと駅まで歩く。
「先輩、送ってく」
「まだ明るいから1人で大丈夫だよ」
「俺が送りたいの」
甘え…てるのかな、これ。
嬉しくなって顔がニヤける。
「じゃあ送ってもらおうかな」
「ん」
照れ隠しのふてくされ顔、ちょっとわかってきた。
私が素直になれば高遠くんの笑顔が見れることも。
ネガティブな私が素直になるのは結構大変だったりするけど、それでもこの笑顔が見れるなら…って思えば素直になれる。
「明日から高遠くんも先輩だね」
「あいつら面倒見んの大変。うるさいし世話焼けるから」
嫌そうに言ってるけど、顔はそんなに嫌じゃなさそうだよ。
きっと楽しみなんだよね。
好きなんだよね、あの2人のことが。