その背中、抱きしめて 【上】
(私もついに3年生かぁ…)
高遠くんと毎日顔を合わせられるのもあと1年。
でも、インターハイが終わって引退したら…平日しか会えない。
平日学校でだって教室の階が違うし、会えるかどうかわからないんだよね。
引退したら、高遠くんが遠くなっちゃうのかな。
私はきっと予備校に通うことになるし、一緒にいられる時間はどんどん少なくなる。
(高遠くんの気持ち…離れちゃうんじゃないかな…)
会える時間が減って、連絡も減って…
また去年の秋みたいに自然消滅になっちゃったら…。
(やだよ…)
たまらず高遠くんの腕にぎゅっとしがみつく。
「どしたの?…あれ、泣きそう?先輩どした?」
高遠くんが心配そうに私を覗き込む。
「引退したら受験勉強しなきゃいけないし、高遠くんも部活忙しいだろうし、会う時間少なくなっちゃって…また前みたいになっちゃったらどうしようって…」
やだよ、そんなのやだ。
私、前よりずっとずっと独占欲強くなってる。
高遠くんが必要になってる。
高遠くんがいなきゃダメになってる。
「…もう離れて行かないで」
ようやく絞り出した声は涙で震えた。